研究課題/領域番号 |
18K16227
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金井 有吾 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (80802769)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Osteocrin / CNP / NPR-C / 骨伸長 |
研究実績の概要 |
本研究は、骨組織および骨格筋が分泌する分子として同定されたosteocrin(OSTN)の生体内での作用、特にその分泌臓器である筋骨格系に対する作用を解明することを目的としている。これまでに、OSTNはナトリウム利尿ペプチド(NP)のクリアランスレセプターであるNPR-Cに結合することでそのクリアランス作用を阻害し、NP活性を増強する作用を持つことが報告されている。 一方、NPの中でもC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は強力な骨伸長促進作用を持ち、CNPの投与は軟骨無形成症などの骨伸長障害を呈する疾患の治療薬となり得ることが示されている。欧米ではCNPやそのアナログ製剤の軟骨無形成症に対する臨床試験が既に行われているが、それらが生体内で容易に分解されてしまうなどの問題があり臨床応用には至っていないのが現状である。 これまで、OSTNの作用に関しての報告はin vitroでの研究によるものが主であったが、本研究ではOSTN循環血中濃度が上昇するトランスジェニックマウスを新規に作製し、そのマウスを解析することでOSTNが骨伸長促進作用を持つことや、NPR-CによるCNPのクリアランスをOSTNが阻害することによりその作用を発揮しているということをin vivoで初めて示した。またCNPとOSTNの血中濃度を同時に上昇させることでCNPの骨伸長作用が増強されることから、両者の共投与によりCNPによる治療効率を向上させられる可能性が高いことを示し、申請者らはこれらの結果を論文発表した。 CNPの臨床的有用性はこれまでも示されているが、CNPの制御修飾薬の開発という観点での研究などは報告がなく、本研究はその点で独創的であり、且つ、骨系統疾患に対する新しいアプローチの展開研究となる点で意義深いと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はosteocrin(OSTN)の筋骨格系に対する作用を解明すること、そしてOSTNが筋骨格系関連疾患に対して臨床的に有用な分子となる可能性を明らかにすることを目的としている。そしてこれまでの研究により、OSTNが骨に対する作用として骨伸長促進作用を持つことを明らかにし、OSTNが骨系統疾患において臨床的に有用である可能性を示すことができ、論文発表するに至っている。その意味において本研究は順調に進展していると考えて差し支えないと言える。
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今後の研究の推進方策 |
osteocrin(OSTN)を骨系統疾患に対する治療薬として臨床応用することを目指す上で、OSTNを投与することにより起こり得る副作用、例えば心血管系でのNP活性の増強に伴う血圧低下などについての検討が必要不可欠である。本研究ではOSTNの循環血中濃度が上昇するトランスジェニックマウスを初めて作製し保有ており、これを用いてOSTNの生体内での作用を検討する様々な実験が可能な状況である。このマウスを用いることで副作用の検討などは可能であり、推進していく予定である。 また、OSTNの骨における作用だけでなく骨格筋における作用も明らかにしたいと考えている。OSTNの骨格筋における作用としては、骨格筋のミトコンドリア生合成を促進し運動耐用能を高める作用があるという報告がなされているが、その他の点は明らかになっていない。特にミトコンドリア生合成を促進するという点からは、OSTNが加齢や廃用などによる筋萎縮やサルコペニアといった病態を改善させる可能性があり、同じくトランスジェニックマウスを用いて、例えばマウスの肢の固定や吊り下げによる廃用モデルの作製、もしくはステロイド投与により筋萎縮モデルを作製し、それらの骨格筋で形態学的・組織学的検討を行うことで検討可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題のもと、引き続き研究を継続するために生じており、その目的で使用する。マウス購入、実験に必要な消耗品の購入費用として使用する計画である。
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