研究課題
1)GPI-PLDによる糖代謝、脂質代謝調節機構の解明GPI-PLD遺伝子は肝臓で高発現しており、db/dbマウスやSTZ負荷・糖尿病病態マウスでは、肝臓での遺伝子発現と血中濃度が有意に上昇していた。また、GPI-PLD欠損マウスでは、高脂肪高蔗糖食負荷による耐糖能障害や脂肪肝の進展が顕著に抑制されており、肝DAG蓄積ならびにPKCε活性化の有意な抑制を認めた。ラット肝初代培養細胞を用いた細胞実験において、細胞内DAG量はGPI-PLDのノックダウンにより有意に減少した一方で、アデノウイルスによる過剰発現では、特にGPIの生合成に関わる脂肪酸側鎖であるアラキドン酸添加時に顕著に増加した。また、外来通院中の男性患者88名において、血中GPI-PLD濃度は血中TG値やALT値と有意な正相関を示した。以上より、GPI-PLDは肝DAG量を直接的に変化させることで、脂肪肝進展やインスリン抵抗性に関与する可能性があることが初めて示された(AJP-Endo. 2019)。2)キサンチン酸化還元酵素(XOR)の病態学的意義と、代謝・血管病への影響2型糖尿病患者および減量手術を施行された高度肥満患者において、血中XOR活性の独立した規定因子は肝逸脱酵素(血中AST・ALT)のみであった(J Diabetes Investig. 2020)。また、食餌誘導性NASHモデルマウスにおいて、血中XOR活性は顕著に上昇するとともに、血中でのプリン代謝の亢進を認めた。さらに、NASHマウスでは、頸動脈結紮による新生内膜増殖が亢進したが、XOR阻害剤であるtopiroxostat投与により抑制される結果が得られた。これらの結果から、NAFLD/NASHに伴う血中XOR活性の上昇は、活性酸素種の産生などを介して動脈硬化性疾患の進展に直接関与する可能性があり、現在検討を進めている。
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