これまでの研究で私どもはサイトカイン刺激後の劇症1型糖尿病患者iPS細胞由来インスリン陽性細胞を単離しRNAシークエンスにて発現が低下していた遺伝子としてCH25H(Cholesterol 25-hydroxylase)を見出している。2018年度までに劇症1型糖尿病患者由来iPS細胞3クローンから分化誘導して得られたインスリン陽性細胞を含む細胞においてサイトカイン刺激にて上昇したCaspase3活性が25HCを投与することで有意に低下することを、また免疫染色において劇症1型糖尿病患者iPS細胞由来インスリン陽性細胞に占める活性型Caspase3陽性細胞の割合は25HCを投与した場合には投与しない場合に比し有意に低下することを見出した。このことから劇症1型糖尿病患者iPS細胞由来インスリン陽性細胞における25HCの抗アポトーシス効果を見出した。2019年度はよりウイルス感染を模倣する系として劇症1型糖尿病患者iPS細胞由来インスリン陽性細胞にpoly(I;C)をトランスフェクションし25HCの抗アポトーシス効果を検討した。種々の濃度のpoly(I;C)や25HCで検討を行ったが、poly(I;C)によるCaspase3活性の有意な低下作用は認めなかった。 また大阪大学工学部と共同で、血中25HC濃度測定系の樹立をすすめた。2018年度には市販健常人血漿中の25HC濃度をGC-MS/MSを用いて測定することに成功した。2019年度はサンプル間の内部標準のばらつきをRSD10%程度まで軽減することができることに成功し、また微量な血液量での測定系の検証をすすめた結果、微量血液サンプルでの25HC濃度測定に一定の目途を立てることができた。
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