研究課題/領域番号 |
18K16232
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 隆作 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (20801088)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 下垂体発生 / FGF / 視床下部 / 口腔外胚葉 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
平成31年度はFGF8、FGF10ノックアウトiPS細胞に加え、FGF18ノックアウトiPS細胞を樹立しその表現型を確認するとともに、口腔外胚葉、視床下部の相互作用を調べるため、それぞれのマーカー遺伝子であるPITX1、NKX2.1のレポーター細胞株を樹立しそれらの株が機能することを確認した。また、OTX2遺伝子変異症例の疾患特異的iPS細胞の解析から視床下部FGF10の機能を見出した。
1) iPS細胞から分化誘導した視床下部-下垂体組織を上皮細胞マーカーを用いてFACSにより視床下部と口腔外胚葉に分離し、FGF18の発現を調べたところ視床下部において発現が有意に高く、視床下部FGFシグナルのひとつとしてFGF18が口腔外胚葉に働き下垂体発生に関わっている可能性が示唆された。平成30年度にFGF8、FGF10のノックアウト細胞株を樹立したが、1)の解析結果から、FGF18の下垂体発生における機能も解析するため、FGF18のノックアウト細胞株をCRISPR/Cas9システムにより樹立した。 2) FGF8、FGF10のノックアウト細胞株では下垂体発生が強く障害されていたが、FGF18ノックアウト細胞株から分化誘導したところ、下垂体への分化能は保たれておりFGF18は視床下部に発現しているものの下垂体発生においては大きな役割はないことが明らかになった。 3)CRISPR/Cas9法により、口腔外胚葉マーカーであるPITX1と腹側視床下部マーカーであるNKX2.1をGFP融合タンパクとなるようにゲノム編集しそれぞれのレポーター株を作成した。これらの株から視床下部-下垂体系への分化誘導を行ったところ、GFPが発現しそれぞれPITX1、NKX2.1の免疫染色とマージすることを確認した。 4) OTX2遺伝子変異症例の疾患特異的iPS細胞の解析からOTX2は視床下部のFGF10シグナルを介して口腔外胚葉の下垂体前駆細胞分化を調整していることを見出し、論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析に必要な遺伝子ノックアウト細胞やレポーター細胞の樹立に成功しその確認が済んでいる。 また、それらの細胞株から分化誘導し表現型を解析することで視床下部-下垂体間におけるFGFファミリーの役割が明らかになりつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに準備したFGFファミリーノックアウト細胞から分化誘導することでその表現型を詳細に明らかにしていく。Spatial transcriptome解析などの技術応用も検討している。 また、作成したレポーター株から分化誘導を行いFACSソートすることで視床下部細胞、口腔外胚葉細胞のみを単離することを予定している。これらの細胞を共培養あるいは単独培養しそれらの遺伝子発現を比較することで一方が他方に及ぼす影響について網羅的に解析していくことを予定している。 しかし新型コロナウイルス感染症の流行に伴い研究を大いに制限せざるを得ない状況が続いている。その間、解析や情報収集を優先し当初の予定にキャッチアップできるように尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他プロジェクトで余った試薬、消耗品などを利用することができたため費用を節約することができた。次年度使用の予定としては次世代シークエンサーを用いた網羅的解析に要する費用などに充てる予定である。
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