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2019 年度 実施状況報告書

カルシウム感知受容体が膵β細胞および腸管上皮細胞機能の調節に果たす役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K16234
研究機関徳島大学

研究代表者

倉橋 清衛  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (30567342)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード糖尿病 / 膵β細胞 / Ca感知受容体
研究実績の概要

これまでの検討でヒト活性型変異CaSR (A843E)を導入した常染色体優性低Ca血症1型(ADH1)モデルマウス(ADH-KIマウス)では恒常的にCaSRシグナルが活性化しており、低PTH血症、低Ca血症があるとともに耐糖能の悪化が認められることがわかっていた。
ADH-KIマウスにVehicleか、血清Ca濃度が同等になる条件のPTHまたはCalcilyticsを前投与したのちに経口および経静脈ブドウ糖負荷試験を行って耐糖能を評価した。両試験ともPTH投与群、Calcilytics投与群ともVehicle投与群より糖負荷後の血糖が低かったが、Calcilytics投与群でより血糖が低い傾向が認められた。PTH投与による低PTH血症および低Ca血症の改善により部分的に耐糖能の改善が認められたことから、CaSRシグナルの恒常的活性化による耐糖能悪化の一部は低PTH血症および低Ca血症を介することが示唆された。さらに、Calcilytics投与群ではPTH投与群よりも耐糖能の改善が認められたことから、CaSRシグナルの恒常的活性化による耐糖能悪化には低PTH血症および低Ca血症を介さない機序があることが示唆された。
また、既報ではADH-KIマウスの耐糖能悪化に膵島における膵β細胞量の減少がかかわると報告されているが、免疫組織化学染色による病理組織検査で、野生型マウスとくらべADH-KIマウスの膵島におけるインスリン陽性細胞とグルカゴン陽性細胞の形態的な変化は認められなかった。単離膵島を用いた検討では、膵島1個当たりのインスリン含量は野生型マウスとADH-KIマウスで差がなかったが、単離膵島1個当たりのインスリン分泌が野生型マウスよりADH-KIマウスで低下しており、CaSRシグナルの恒常的活性化が膵β細胞のインスリン分泌機構を傷害している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に以下の①~③の検討を挙げた。
① 膵島における持続的なCaSRシグナルがインスリンおよびグルカゴン分泌機構に与える影響を明らかにする。② 腸管上皮における持続的なCaSRシグナルがインクレチン分泌機構あるいはブドウ糖吸収に与える影響を明らかにする。③ 薬物的なCaSRシグナルの調節によるホルモン分泌能とブドウ糖吸収能の変化を明らかにする。
①に関して、先行研究でCaSRシグナル過剰が膵β細胞量の減少によりインスリン分泌低下を引き起こすと報告があるのに対し、我々はCaSRシグナル過剰がインスリン分泌機構を障害する新たな機序を見出した。また、③に関してCaSRのアンタゴニストであるCalcilyticsがADH-KIマウスのCaSRシグナル過剰による耐糖能異常を改善させるのみならず、野生型マウスでも耐糖能の改善効果を示す結果を得ており、糖尿病の新たな治療薬の創薬候補となる可能性を見出した。②に関しては現在検討中である。以上から、研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

腸管上皮における持続的なCaSRシグナルがインクレチン分泌機構あるいはブドウ糖吸収に与える影響を明らかにする点について検討を進める。具体的には、インクレチン分泌を介した血糖調節の検討のため、ADH-KIおよび野生型マウスにおけるGLP-1、GIP分泌の検討を行う。インクレチン分泌の変化が認められた場合、calcilyticsの投与を行い、CaSRシグナルの抑制によるインクレチン分泌の調節が可能か検討する。ADH-KIマウス小腸上皮を用いたex vivoの系にて糖吸収量の定量を行うとともに、小腸上皮におけるSGLT-1、GLUT2発現量および分布、そしてこれらブドウ糖輸送体とCaSRとのco-localizationについても明らかにする。さらに、培養腸管細胞(Caco-2)にヒトCaSR活性型変異遺伝子および不活性型変異遺伝子を導入してブドウ糖の吸収をin vitroで確認する。これらの系においても、ADH-KIと野生型マウスの差異がみられた場合にはcalcilyticsを添加して腸管上皮におけるブドウ糖吸収の調節が可能か検討する。
得られた結果をまとめ、論文投稿の準備を行う。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画の見積もりより測定試薬購入費用が少なく済み、物品費が少なくなったため残額が生じた。来年度の試薬測定費用に充てる予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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