研究課題/領域番号 |
18K16244
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
牧山 智彦 杏林大学, 医学部, 助教 (60733102)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インスリン分泌 / インスリン抵抗性 / 膵β細胞 / ATP |
研究実績の概要 |
妊娠や肥満などインスリン抵抗性状態では、その代償のため膵β細胞はインスリン分泌を著しく亢進させる。この代償機構にはβ細胞の容積増加と共に、個々のβ細胞からのインスリン分泌能亢進が重要と考えられているが、インスリン分泌能亢進の分子機構は未だ不明な点が多い。最近私達は、β細胞から細胞外へ放出されるATPが自己分泌/傍分泌作用によりP2X7受容体を介して、代償性インスリン分泌能亢進を調節している可能性を見出しており、本研究ではインスリン抵抗性状態におけるP2X7受容体シグナルによるインスリン分泌能亢進の分子メカニズムを解明することを目的とした。まず、マウス膵島内ではP2X7受容体が主にβ細胞に局在していることをP2X7受容体-EGFPノックインマウスを用いて明らかにした。1) また、野生型 (WT) , P2X7受容体ノックアウトマウス (P2X7 KOマウス) の非妊娠群、妊娠群から調製した膵島からのインスリン分泌解析では、非妊娠P2X7 KOマウス膵島では影響が見られなかったが、妊娠P2X7 KO膵島では、妊娠野生型 (WT) マウス膵島と比較して、グルコース応答性インスリン分泌 (% release)が有意に抑制されており、2) この時P2X7受容体ならびにインスリン分泌関連蛋白質の発現量、また膵島内β細胞量は妊娠WTマウスと妊娠P2K7 KOマウスで違いが見られなかった。一方、マウス膵島には細胞外へのATP放出チャネルであり、P2X7受容体との相互作用が報告されているパネキシン1が発現していた。3)これらの結果より、P2X7受容体シグナルによるインスリン分泌能亢進の分子メカニズム解明には細胞外へのATP放出機構を明らかにすることが重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
P2X7受容体ノックアウトマウスの繁殖、また特に実験に用いる妊娠マウスの作成が予定通りに進まない点もあるが、研究は概ね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
P2X7受容体シグナルによるインスリン分泌能亢進の分子メカニズム解明には細胞外へのATP放出機構を明らかにすることが重要であることがわかったため、非妊娠、妊娠β細胞における細胞外へのATP放出量の測定、またその機構を解明する予定である。この結果と前年度までに明らかにしてきた結果を統合し、妊娠期インスリン分泌能亢進の分子基盤を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費として使用予定だったが、学会出張に出なかったため。2019年度は学会出張予定のため、そちらで計上するとともに物品費で使用予定。
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