研究課題/領域番号 |
18K16255
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
渡邉 健司 山口大学, 大学研究推進機構, 助教 (50711264)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乳がん / GONAD法 / 変異解析 |
研究実績の概要 |
ERα 陽性乳がんの治療の一つとして内分泌療法が行われるが、多くの場合耐性が認められる。耐性を打破するためには、恒常的な ERα 高発現を抑制する効果的な治療法の開発が必要である。一方、乳がんはゲノム異常の蓄積が病態に関与する。我々は、ERα 発現を増加させる遺伝子変異の同定を試みた。我々は、ERα 発現を増加させるSwitch-Independent 3 Transcription Regulator Family Member A (SIN3A)遺伝子に変異を検出した。ERα 発現に対する機能を検討した結果、(i) 変異体は ERα の発現を上昇させるLoss-of-function 変異であること、(ii) 変異体は、乳がん細胞株の増殖を促進することを見出すことができた。現在、SIN3A変異体の機能をさらに詳細に検討するために、Genome-editing via Oviductal Nucleic Acids Delivery (GONAD)法を用いてSIN3A変異体を乳腺特異的に発現するノックインマウスの作成を試みている。変異体を発現するマウスを作成するための予備検討を実施した。まず操作手技を確立するため、1本鎖DNAを用いずにGONAD 法を行うことでAKR1B7 のKO マウスを作成した。GONAD 法を用いて処置したマウスから52匹の胎児が生まれた。生まれた胎児の内、7匹(13.5%)が、両アレルのAKR1B7がノックアウトされていた。20匹(23.1%)は、AKR1B7の片方のアレルのみノックアウトされていた。13匹(25%)は、複数の箇所がノックアウトされたモザイク状態であった。このように一回のGONAD法によるマウスへの処置で短期間に両アレルノックアウトマウスを作成することができた。現在、SIN3変異導入マウスを作成するために、1本鎖オリゴDNAのエレクトロポレーションを用いた導入の条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、SIN3A変異乳がんの分子機構を解明し、治療標的を同定するために、以下の3点について明らかにすることを考えている。①GONAD法により、乳腺特異的変異SIN3A発現マウスを作成する。②作成したマウスまたは、SIN3A変異導入ヒト乳がん細胞株を用いてSIN3A機能低下乳がんにおける標的遺伝子の同定を行う。③作成したマウスにおいて腫瘍の発生を確認できた場合、同定した標的分子に対する治療薬の効果を検討する。現在①、②を進行中である。当初の計画では、最終的に比較的長いプロモーター配列を含む目的遺伝子配列を一回で導入する予定であったが、導入効率が悪く実現できなかった。現在、目的遺伝子配列を分割し、導入できるのか確認中である。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、ERα 発現を増加させるSIN3A遺伝子変異乳がんの分子機構を解明するために、SIN3A変異体を発現するノックインマウスの作成を試みている。これまでの検討により、ノックイン用の1本鎖DNAを用いずに GONAD 法を行ったところ、両アレルが狙い通りに改変されたマウスの作成に成功し、GONAD法の手技に問題がないことを示した。現在、まず短い1本鎖のオリゴDNAを用いてノックインマウスの作成を試み、ノックインマウスも作成できるか確認を行っている。導入効率が依然として悪く苦戦しているが、オリゴDNAの導入濃度、導入時に使用するエレクトロポレーションの電圧の条件を細かく検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、前年度購入した物品を使用し、実験を行う。
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