研究実績の概要 |
microRNA-449a(miR-449a)が欠失、あるいは発現低下することによって大腸癌発癌・癌進展が促進する可能性が示唆された(Sci Rep. 2017)。miR-449aの詳細な機能・制御機構については不明であり、癌悪性度評価や予後予測等バイオマーカーとしての確立、また新規治療手段開発に向けてさらなる研究が急務である。miR-449aはHiston diacetylase 1(HDAC1)、SOX4、Lactate dehydrogenase (LADH)といった癌幹細胞性、上皮間葉転換・解糖系を制御する遺伝子群を標的とし得る。実際に大腸癌切除標本におけるmiR-449a発現とHDAC1発現は逆相関しており大腸癌においてもHDAC1が標的遺伝子として存在していることが示唆された(Anticancer Res.2020)。miR-449aはこれら標的遺伝子を介して癌表現系・悪性度を決定づけるという仮説のもと、癌細胞株に置ける上皮間葉転換(EMT)誘導プロトコールの確立を図った。TGFβ、Wntシグナル増強によりEMT誘導がなされたかどうかを、EMT関連因子(E-cadherin,Twist,Snail)遺伝子の発現量にて評価したが有意な発現量の変化は認められなかった。TGFβ、Wintシグナル誘導のタイムポイントや細胞株自体のEMT誘導に対する感受性の差が関連していると考えられた。また胃癌摘出標本を用いた検討にて、miR-449a発現量は非癌部に比較して癌部で有意に低く、深達度や病期など悪性度が高いほど低発現であった。miR-449a低発現群では高発現群に比較し優位に予後不良であった。さらに血中のmiR-449a発現量は癌組織中のmiR-449a発現量と相関していた(In Vivo. 2020)。大腸癌と同様に胃癌症例においてもmiR-449aはバイオマーカーとして機能しうることが示唆された。
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