研究実績の概要 |
胃癌診断に必須である内視鏡検査と組織生検にはコストがかかり侵襲的である。近年、非侵襲的なバイオマーカーが注目されているが、既存の腫瘍マーカーであるCEA、CA19-9では早期胃癌を検出できない。これまでバイオマーカーとして末梢血循環腫瘍細胞(CTC)などが報告されてきたが感度、特異度の面でまだ不十分であり、非侵襲的かつ高い正確性を持った早期胃癌の新規診断及び経過観察バイオマーカーの確立が必要である。本研究ではこれまでに、複数のパブリックデータベースから統計学的解析を用いて選ばれたmiRNAを、胃癌凍結組織を用いてリアルタイムPCR法で検証し、6つのmiRNA (miR-146b、 miR181b、miR-181a、miR-18a、miR-93、miR-335)から構成されるsignatureを確立した。このsignatureは、さらに二つの異なるコホートの胃癌患者の血清を用いて検証され、胃癌を診断するためのバイオマーカーとして、高いAUC (Area Under the Curve)を有することを示した(1st コホート n=327, AUC=0.82, 95%CI 0.75 - 0.89、2nd コホート n=259, AUC= 0.87, 95% CI 0.82 - 0.92)。さらにこのsignatureをStageIの胃がん患者のみの血清で、胃がんの検出精度を評価したところ、非常に高い診断能を有し(AUC=0.86, 95% CI 0.79-0.92)、既存の腫瘍マーカーであるCEA、CA19-9と比較しても強力な診断能を持つことが示された(CEA; AUC=0.58, P=0.0001, CA19-9; AUC=0.64, P=0.0001)。これらの結果から、6つのmiRNAから構成されるsignatureが胃癌の診断マーカーとなりうる可能性が示唆された。 論文執筆は終了しており、然るべき医学雑誌に投稿予定である。
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