研究課題
小児短腸症候群は小児外科領域において管理に難渋する疾患の1つであるが、症例数が限られているため、臨床情報からだけではエビデンスが得られにくい。そのため動物モデルにおける大量腸管切除・術後絶食経静脈栄養管理の検討は極めて重要である。またグレリンをはじめとする消化管ホルモンや腸内フローラについての研究それぞれについては世界的に報告が多いが、小児短腸症候群とそれら両者の関係についての報告はない。当科において確立された動物モデルと蓄積されたデータを用いて、短腸症候群における腸内フローラと消化管ホルモンの関係を解明可能と考える。また臨床においては、過去30余年におよぶ短腸症候群患児の治療経験も有している。さらに本研究の内容は成人において長期絶食を余儀なくされた患者におけるPNALDや腸管絨毛の委縮の予防、上腸間膜動脈症候群や外傷によって短腸症候群となった患者についても応用が可能であり、対象となる患者数は潜在的に非常に多いと考える。小児・成人の幅広い分野において管理に難渋する疾患である大量腸管切除後の腸管順応およびIFALDの予防における新たな術後管理の確立に向けた第一歩であり、社会的な意義は大きいと考える。本研究では、短腸症候群における腸内フローラの変化と消化管ホルモンの関連を解明することにより、IFALDを予防しながらTPNを早期に離脱できる腸管順応を獲得する新たな治療法の開発を目的としている。現在までにモデルラットの作成および組織学的・生化学的検索を行った。短腸症候群+静脈栄養モデルラットにおいて、肝障害が生じることを確認できており、GLP-2(glucagon like peptide 2)を投与することによって、その効果を検討中である。腸内フローラの検索をおよび消化管ホルモンの投与が与える影響については今後予定している。
2: おおむね順調に進展している
ヒトの約1年間に相当する14日間をモデルラットの長期絶食期間として設定し観察を行った。吸入麻酔下に右外頸静脈から右上大静脈起始部に中心静脈カテーテルを留置し、皮下を通して背部に導出し頸静脈栄養ルートを確保し、14日間の観察を行った。また大量腸管切除モデルとして80%短腸ラットモデルを作成し、手術時に前述の方法で経静脈栄養ルートを挿入し、14日間の観察を行った。いずれの群においても、腸管の絨毛高、陰窩深、肝臓の組織学的検索、血清生化学検査および消化管ホルモンの測定を行った。また、腸内フローラ検索のため回盲部の便を回収・保存している。
母数を増やすため、さらにモデルラットの作成を続ける。今後は消化管ホルモン投与群を作成し、腸内フローラjavascript:onSave();に対する効果を検討する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Peptides
巻: 106 ページ: 59~67
doi: 10.1016/j.peptides.2018.06.009
Journal of Pediatric Surgery
巻: 53 ページ: 2444~2448
doi: 10.1016/j.jpedsurg.2018.08.019