研究課題
静脈栄養の発達により短腸症候群を含む腸管不全症患児の予後は著しく改善したが、カテーテル関連血流感染症や代謝性合併症などが問題となっている。中でも腸管不全合併肝障害(IFALD)は致死的合併症の一つで、IFALDの治療として腸管延長術などの外科的介入やω3系脂肪酸製剤の効果が報告されているが、病態メカニズムの全容解明には至っていない。また近年、腸内フローラと短腸症候群の関連についての報告が散見されるが、治療に結び付くデータは少ない。当研究グループでは短腸症候群における消化管ホルモンについての研究データを蓄積しており、その臨床応用に向けて腸内フローラに着目した。本研究では、短腸症候群における腸内フローラの変化と消化管ホルモンの関連を解明することにより、IFALDを予防しながらTPNを早期に離脱できる腸管順応を獲得する新たな治療法の開発を目的とする。①長期絶食・経静脈栄養管理を動物モデルで確立し、TPNによる腸内フローラの細菌種および多様性の変化と、それが腸管粘膜の萎縮や肝障害に与える影響を明らかにする。モデルラットの作成と管理を確立させた。消化管ホルモン投与によって、腸管・肝に対する障害の形態学的に予防効果があることが分かった。②大量腸管切除・術後絶食経静脈栄養管理を動物モデルで確立し、術後の腸内フローラの細菌種および多様性の変化と、それが腸管順応やIFALDに与える影響を明らかにする。モデルラットの作成と管理を確立させた。消化管ホルモン投与によって、腸管・肝に対する障害の形態学的に予防効果があることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
長期絶食・経静脈栄養および短腸症候群・長期絶食TPNモデルラットの作成及び管理を確立している。実験開始初期は研究員の手技にばらつきがあり、動物の管理に難渋したため、母数を増やすのに時間を要した。消化管ホルモンの投与についても順調に進み、検体数が確保できつつある。腸管の絨毛高や陰窩の深さなど、形態学的な変化や、SGLT1やGLUTなどのグルコース輸送蛋白の発現を検定している。腸管フローラの検索目的に排泄された便や犠死時に盲腸内に貯留している便を検体として保存している。次世代シーケンサーによる検索はコストの問題から、ある程度の母数が集まった段階で行うこととしている。
引き続きモデル動物の作成および検体の採取を行う。次世代シーケンサーによる検索はコストの問題から、ある程度の母数が集まった段階で行うこととしている。検体数がある程度集まった段階で、腸管フローラの検索を行う。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Journal of Laparoendoscopic & Advanced Surgical Techniques
巻: 29 ページ: 1252~1258
10.1089/lap.2019.0212
Pediatric Surgery International
巻: 35 ページ: 1345-1351
10.1007/s00383-019-04560-8
Journal of Pediatric Surgery
巻: 54 ページ: 2514~2519
10.1016/j.jpedsurg.2019.08.048