研究課題/領域番号 |
18K16264
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
村上 祐子 福島県立医科大学, 医学部, 病院助手 (40815081)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 乳癌 / 細胞接着 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
細胞間接着装置の最も上極に位置するタイト結合は、機械的な結合に加えて様々なシグナル伝達にも寄与している。タイト結合分子複合体の中心を成す膜貫通分子クローディンは26種類以上からなるファミリーを形成し、組織・細胞特異的な発現パターンを示す。がんではこのクローディン発現パターンが変化するため、腫瘍に対する免疫染色分子マーカーとして有用性が示されている。申請者所属研究室ではクローディンから核内受容体に至る新規のシグナル伝達経路を同定し、それが幹細胞の上皮分化トリガーとなることを明らかにした。また婦人科癌で同経路が悪性形質増強に作用することも示された。よって当初研究計画に示した通り、乳癌におけるクローディン-4 (CLDN4)の臨床病理学的意義と細胞機能を解明すべく研究を進めた。 乳癌手術検体を用いた臨床病理学的検討では、CLDN4高発現が若年における予後不良因子である可能性が示された。また複数の乳癌培養細胞株に対してCLDN4の機能欠失・機能獲得を施行し、CLDN4が悪性形質を正に制御することを明らかにした。以上の結果ならびに幹細胞の上皮分化や婦人科癌の研究で得られた知見から、この作用がエストロゲン受容体のリン酸化を介したものである蓋然性が高いことが考えられ、今後はシグナル伝達経路の検証とエストロゲン依存性に着目して研究を推進する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収集した手術検体数は200を超え、細胞生物学的な実験についてもCRISPR法を用いたノックアウト細胞の樹立を含めて進行の律速段階は終えており、当初予定していたとおり順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
臨床病理学的検討では、生命予後に加えてTNM分類や他の分子に対する免疫組織化学的性状などとの関連性を、多変量解析などにより解析することにより、CLDN4の予後予測マーカーとしての有用性を明らかにする。培養細胞を用いた分子生物学的な検討では、まず第一に阻害剤や免疫沈降などを用いてシグナル経路を明らかにする。第二にゲノム編集によるエストロゲン受容体のノックアウトやリン酸化不応体のレスキュー実験などを行い、CLDN4シグナルの終着点を同定する。最後にRNAシークエンスによるトランスクリプトーム解析によってこのシグナルに制御される下流分子群を同定することにより、乳癌におけるCLDN4の細胞機能と治療標的としての可能性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
CRISPR法を用いたノックアウト細胞の樹立を含めて進行の律速段階は終えており、研究が順調に進捗したことが差額が生じた原因である。 引き続き臨床病理学的検討、分子生物学的な検討を並行して進めていく。
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