制御性T細胞(以下、Treg)が免疫抑制、免疫寛容の中心であると提唱され(Wood KJ and Sakaguchi S. Nature Rev Immunol 2003;3:199-210)、10数年が経過した。仮に、Tregが免疫抑制の主役であると仮定して、特定抗原に対して寛容を示すTregが新たに胸腺から供給されるnaive T細胞を教育しているのか否かは解明されていない。また、移植された免疫寛容なTregがどこに移動し、どのように作用しているかも解明されていない。当研究ではマウス心臓移植モデルを用いて、抗CD80/86抗体により誘導されたTregによる免疫寛容がどのように維持されるのかについて調査、解析する。急性拒絶反応に関してはシクロスポリン等の免疫抑制薬やステロイドの使用により、一定の制御が可能になった。しかし、長期生着の重要な因子である免疫寛容維持の機序は解明されておらず、慢性拒絶反応には非特異的薬剤の投与に依存することが多かった。つまり、免疫寛容維持の機序を解明することが最新の移植医療の命題であり、今後の臨床応用に繋がると考えられる。 2018年度はマウス移植心の生着延長期間の測定と制御性T細胞の誘導の確認を中心に行った。2019年度は2018年度の長期生着プトロコルを基に、CD80/86抗体を投与し30日以上生着した心臓移植マウスの脾臓からCD4陽性CD25陽性細胞を分離し、Adoptive transferを行った。2020年度はCD4陽性細胞のみのAdoptive transferを施行した。また、CD80/86抗体投与群のドナー特異的抗体を測定し、移植後1週目、2週目、4週目におけるDSAは完全に抑制されていることが判明した。 2021年度は2018年から2020年の総括として、学会報告や論文作成を行った。
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