研究課題/領域番号 |
18K16267
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
井廻 良美 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20649040)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DYRK2 / 乳癌 |
研究実績の概要 |
DYRK2はリン酸化酵素であり、DYRK2の発現が低い乳癌では細胞増殖能、浸潤能が高く、悪性度が高くなっている。そこで、本研究ではDYRK2の発現の低い乳癌で、治療効果の高い薬剤があるかを調べるため、マイクロアレイを用いて、DYRK2によって制御を受ける下流の遺伝子を網羅的に探索し、乳癌細胞株を用いた生化学的解析により、その発現制御機構を明らかにすることを目標にかかげている。 これまでの研究から、マイクロアレイを用いて、DYRK2によって制御を受ける遺伝子を網羅的に探索した結果、代表的なヒト乳癌細胞株であるMCF-7では、DYRK2の発現を抑制すると、Cyclin-dependent kinase 14 (CDK14) の転写が増加することが判明している。 平成30年度は、DYRK2によるCDK14の発現制御機構に焦点をあてた解析を行った。CDK14は直接DYRK2に転写制御されていると考えられ、レポーターアッセイ・転写因子の結合部位解析を用いて、転写因子の同定を目指した。その結果、Androgen receptor (AR) が転写因子として同定された。 更に、東京慈恵会医科大学附属病院で2001年-2002年に手術を受けた乳癌検体60例を対象に、免疫組織染色にてDYRK2とCDK14の発現を検討した。乳癌検体の免疫組織染色にてDYRK2とCDK14の発現を検討すると、DYRK2低発現の組織ではCDK14が増加しており、ヒト乳癌組織においても細胞株を用いた実験と同様の相関性が認められた。 本内容は、乳癌において、DYRK2の発現が低下することで転写因子ARを介してCDK14の発現が増加し、腫瘍細胞の増殖・浸潤が促進されるとして、原著論文として発表した (Imawari Y, et al. Cancer Sci. 2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度の計画である、DYRK2によるCDK14の発現制御機構に焦点をあてた解析を行い、レポーターアッセイ・転写因子の結合部位解析を用いて、転写因子を同定した。 更に、東京慈恵会医科大学附属病院で2001年-2002年に手術を受けた乳癌検体60例を対象に、免疫組織染色にてDYRK2とCDK14の発現を検討し、ヒト乳癌組織においても細胞株を用いた実験と同様の相関性が認められた為。
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今後の研究の推進方策 |
DYRK2の発現量と抗癌剤等の各種薬剤の治療効果の相関を検討する。 DYRK2の発現が低い乳癌細胞株(MDA-MB-231細胞など)、高い乳癌細胞株(MCF-7細胞など)に抗癌剤・CDK14阻害薬・前年度に同定した転写因子ARの阻害薬などを作用させ、MTSアッセイを用いて、腫瘍細胞増殖能を測定する。更に、DYRK2を発現抑制した際と過剰発現させた際の腫瘍細胞増殖能や各種薬剤耐性の変化を測定し、DYRK2の発現が低い乳癌組織において各種薬剤の治療効果が低くなっているのかを、in vitroでのMTSアッセイや、マウスを用いた腫瘍形成能判定などのin vivoで判定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Eleventh AACR-JCA Joint Conference on Breakthroughs in Cancer Research: Biology to Precision Medicine の開催が2019年2月であり、クレジットカード決済のの請求時期の遅れにより、年度内に決算処理が出来なかった為。 請求書が届き次第、速やかに決算処理を行う予定である。
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