本研究では、神経芽腫が有する抗腫瘍免疫に対する抑制効果の作用機序解明および、神経芽腫を標的としたNKT細胞免疫療法の有用性を明らかとすることを目的とした。 まず、神経芽腫腫瘍環境による樹状細胞を介した免疫抑制効果を検討した。単球由来樹状細胞の分化誘導系に神経芽腫細胞株(NLF、GOTO)の培養上清を加えると、本来発現が消失するCD14分子の発現持続と、発現が亢進するCD1a分子の発現抑制が認められた。また、樹状細胞上の活性化補助シグナル分子CD40、CD83、CD86の発現低下を認め、抑制性補助シグナル分子PD-L1の発現上昇を認めた。さらに、成熟化刺激を受けた樹状細胞によるIL-12、TNF-α産生能が劇的に低下した。続いて、本培養系にて誘導したαGalCerパルス樹状細胞によるNKT細胞刺激後のIFN-γ産生量を比較すると、NLFの培養上清を添加した樹状細胞にて減少した。これらの結果から、神経芽腫における腫瘍微小環境では、樹状細胞の機能が抑制され、NKT細胞免疫系による抗腫瘍免疫応答が阻害されている可能性が示唆された。 続いて、神経芽腫細胞株から分泌される可溶性因子による単球由来樹状細胞の分化阻害メカニズムを解明するために、RNA-sequenceを用いた網羅的遺伝子発現解析をおこなった。神経芽腫細胞株の培養上清を添加し誘導した樹状細胞と、コントロールとして培養上清無添にて誘導した樹状細胞における、それぞれの遺伝子発現量を比較した。さらに、樹状細胞の機能を抑制する神経芽腫細胞株群と抑制しない細胞株群の網羅的遺伝子発現解析をおこない、抑制する腫瘍細胞株群で特異的に発現する32種類の遺伝子を特定した。
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