研究課題/領域番号 |
18K16277
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中沼 伸一 金沢大学, 附属病院, 助教 (00640921)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | TMA / ADAMTS13 / vWF / 血小板凝集 / リコンビナントADAMTS13 |
研究実績の概要 |
難治性疾患である肝類洞閉塞症候群(VOD)および血栓性微小血管障害(TMA)は、ともに血管内皮障害が誘発因子であり、血小板減少を伴う凝固系異常を認め、進行すると臓器機能不全を認めることが知られている。両疾患の関連性に関する実験的な解明はあまり進んでいない。 本研究では、肝移植後の肝生検で得られた肝組織を用いて、TMAの病態を評価し、同病態と肝組織障害の関連性および臨床病態に与える影響を評価する。次にVOD動物モデルを用いて肝組織におけるTMA病態を評価し、同病態がVODの誘発・進行に与える影響を検証する。本研究によりVOD病態解明がTMAの観点から進めば、TMA領域の新規治療がVODにおいても応用できる可能性がある。TMAの新規治療としてリコンビナントトロンボモジュリン(rTM)の有用性が報告され、また最近ではUnusually largevonWillebrand factorの切断酵素であるADAMTS13が実験的に使用可能となった。本研究では、両薬剤を使用し、TMA治療を介したVOD抑制効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床検体を用いたTMA病態の評価として、生体肝移植を受けた成人症例の肝生検組織を使用し、免疫染色を行った。その結果、類洞に沿ってVon Willebrand factor(vWF)は凝集塊様に発現し、ADAMTS13は明確なドット様の発現し、CD42bは凝集様または肝細胞に内に点状に発現する血管外血小板凝集の発現として確認された。これらは主にZone2および3に認められた。またvWFとCD42b発現強度は、Zone3において有意な正の相関を認め、中心静脈周囲の領域に、TMA病態が発生しやすいことが証明された。 マウスにモノクロタリン(MCT)を投与してVODモデルを作成した。VOD群はSham群と比較して、48時間の経過において、肝臓組織の免疫染色ではvWF・ADMATS13発現の増強を認めた。血液検体では、血小板数低下および血中vWF濃度および血中vWF(A2)の上昇傾向を認めた。また血中ADAMTS13濃度・活性は減少傾向を認めた。VODモデルにおいて類洞内皮障害が発生し、血管内皮よりvWFが漏出していることが示唆された。そして肝臓のvWF凝集に対してADAMTS13が肝臓にて消費され、血中濃度や活性が低下している可能性がある。 予備実験としてリコンビナントADMATS13を皮下注すると、48時間の経過で、血中ADAMTS13活性が上昇することを確認した。マウスVODモデルにおいて、MCT投与前にrADAMTS13を皮下注し、TMA病態の抑制を介したVOD軽減効果の有無を評価した。VOD群およびVOD+rADAMTS13群を作成し、血液、血漿、肝臓を採取した。血小板数に有意差を認めなかった。また、HE染色によるVOD所見では、VOD抑制効果を認めず、rADAMTS13単独でのVOD抑制効果を確認できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
rADAMTS13の投与量および投与方法を変更して、VODモデルにおけるrADMATS13前投与によるVOD抑制効果を検討する。また、当教室では、マウスVODモデルにてリコンビナントトロンボモジュリン(rTM)が、血管内皮障害抑制効果を介して、VOD軽減効果を認めたことを報告した。同モデルにおいて、TMA病態の抑制所見を認めるか、評価を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた研究が一部実行できず、予算の一部を使用できなかったため、2021年に延長して使用する予定であるため。
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