研究課題
進行胃癌は治癒切除術後も高頻度に再発をきたすことが大きな問題となっており、治療法選択、術前治療の効果判定、切除術後の再発モニタリングのいずれの場面においても、鋭敏なバイオマーカーの開発が求められている。本研究では、組織中および術前血清中の発現亢進が胃癌の進展・予後と相関し、優れた予後因子となりうることを予備実験で見出したmelanotransferrin (MELTF) に着目し、胃癌の診断・治療の両面における意義を詳細に調べることを目的とした。前向きに組織、血清検体、診療データを収集し、研究期間内に研究計画を完遂しえた。まず、胃癌細胞株を対象にsiRNAを用いたMELTFのノックダウンを行い、細胞機能を解析した。MELTFのノックダウンにより胃癌細胞株の増殖能、浸潤能、接着能が有意に阻害され、またアポトーシス細胞比率が増加することが明らかとなった。ついでin vivo実験では、マウス皮下腫瘍モデルにおいてMELTF阻害による造腫瘍能の低下が認められた。これら結果から、MELTFを阻害するコンセプトは、新たな胃癌分子標的治療に活用可能であることが示唆された。次に、MELTFの組織中および血清中発現量のバイオマーカーとしての有用性について評価した。胃癌切除検体から得た切片を用いて腫瘍組織中のMELTF蛋白発現度を免疫組織化学染色法で調べ、スコアリングした。MELTF染色度は、根治切除術後の再発率と有意な相関を認めた。ELISA法による胃癌患者治療開始前の血清中MELTF値を測定した。血清中MELTF値は、胃癌の病期が進行するごとに増加し、MELTF値高値群は有意に予後不良であった。これらから、MELTF蛋白発現量測定は、組織中、血清中のいずれにおいても新しい胃癌進展度バイオマーカーとして有望であると考えられた。
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Anticancer Research
巻: 39 ページ: 6125-6133
10.21873/anticanres.13820