直腸癌術前化学放射線は局所再発率の低下、自然肛門の温存率の上昇に寄与するが、生存予後に関しては一定の見解を得ていない。programmed cell death-1(PD-1)とそのリガンドであるPD-L1/2は腫瘍の宿主免疫反応からの免疫耐性・逃避させうる重要な免疫チェックポイント分子である。PD-L1の高発現が悪性腫瘍における予後不良予測因子となることが近年報告されているとともに、抗PD-1/PD-L1抗体が新たな癌治療薬として注目を集めている。近年放射線照射が腫瘍細胞のPD-L1発現を誘導することが報告され、また以前から稀に認められる現象として認識されていたAbscopal効果に関してもCD8陽性細胞の活性化など宿主免疫の関与が示唆されるようになってきた。直腸癌術前化学放射線治療において、注目されるPD-L1の発現が治療により誘導されるか否かを明らかにし、その機序をエピゲノムの観点から明らかにし、予後予測マーカーとしての有用性を検証することとした。さらにAbscopal効果への宿主免疫反応の関与を明らかにし、放射線治療における免疫チェックポイント阻害剤の併用による予後改善を期待し、直腸癌患者の生存予後向上を目指す事を目的とする。本年度は、術前放射線治療を受けた直腸癌検体を用いて、PD-L1発現や、MSI、EMASTとの相関と、その治療効果との関係について、研究を進めた。
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