乳癌には、化学療法に抵抗を示す予後不良なものが存在し、その治療成績の向上が喫緊の課題となっている。最近、乳癌の増殖に、タンパク分解酵素であるユビキチンリガーゼのひとつ「RNF5」が関与していることが報告された。私たちはこれまでに、乳癌組織における RNF5遺伝子の発現低下が、乳癌の予後不良因子であることを見出した。これらの知見を踏まえ、RNF5が、「化学療法による“小胞体ストレス”下では、オートファジーを誘導し、乳癌の増殖を抑制する」ことに着目し、RNF5の発現を亢進させることにより、乳癌に対する化学療法抵抗性を克服できないかと考えた。本研究の目的は、ユビキチンリガーゼ RNF5 を治療標的とした乳癌に対する新規分子標的治療薬の開発である。検証のための研究として当施設で長期フォローアップ(中央値10年)を行った、異なる乳癌症例セットを用いて、RNF5遺伝子の mRNA発現と予後との検討を行った結果、RNF5の低発現が予後不良因子であることを確認した。
|