研究課題/領域番号 |
18K16284
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
波戸 ゆかり 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (20721864)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳癌 / オートファジー |
研究実績の概要 |
乳癌の増殖に、タンパク分解酵素であるユビキチンリガーゼの一つであるRNF5が深く関与していることが報告されているため、私たちはこれまでの予備実験で、乳癌組織においてRNF5が低下すると予後不良であることを見出した。私たちは、化学療法による小胞体ストレス化ではユビキチンリガーゼRNF5がオートファジーを誘導し、乳癌の増殖を抑制しているという仮説に着目した。本研究では、RNF5を治療標的とし、乳癌の化学療法抵抗性を克服し、治療成績を向上させることを目的としている。このオートファジーの誘導は、RNF5がグルタミン輸送タンパクであるSLC1A5の分解を促進することが引き金になり、グルタミン取り込みの低下、細胞増殖に関与するmTOR活性が低下し、オートファジーを引き起こすと考えられている。 当該年度では、TaqMan RT-PCRシステムを用いて、観察期間中央値が約10年の長期予後を追跡できた症例で、臨床病理学的データがそろっている約450例の乳癌症例を対象に、乳癌凍結標本からRNAを抽出し、RNF5遺伝子、SLC1A5遺伝子のmRNA発現と予後との検討を行った。また、RNF5遺伝子発現とSLC1A5発現との相関を検討した。 その結果、RNF5低発現の症例は有意に予後不良であったが、SLC1A5遺伝子発現と予後との相関は認めなかった。また、RNF5遺伝子発現とSLC1A5発現との間に逆相関は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度には、乳癌組織検体を用いたSLC1A5遺伝子発現等の解析を行った。しかし、RNF5遺伝子発現ウイルス発現ベクターの作成や、乳癌細胞株を用いて行う遺伝子強制発現およびノックダウンの化学療法の効果への影響に関する検討が十分に施行されていないため、当初の計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、乳癌細胞株に対するRNF5遺伝子強制発現およびRNF5ノックダウンによる影響を、SLC1A5遺伝子発現およびmTOR活性、細胞増殖能等測定して検討を進めていく。また、その検討が進めば、Xenograftモデルを用いたin vivo研究へとつなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は少額であり使用計画に大きな変更はない
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