研究課題/領域番号 |
18K16285
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岡田 憲樹 自治医科大学, 医学部, 助教 (40611786)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肝移植 / 常温酸素化灌流 |
研究実績の概要 |
実験計画に従い、2018年年度では2回のブタ肝灌流実験を行った。いずれの実験も細胞外液型電解質組成、糖濃度、アミノ酸濃度を調整した灌流液に抗凝固薬としてヘパリンを混注した灌流液に、1回目は酸素運搬体としてブタ血液を10%配合した灌流液を用いて12時間の常温酸素化灌流保存実験を行い、2回目はブタ血液を30%配合した灌流液を用いて12時間の常温酸素化灌流保存実験を行った。いずれの実験も12時間の常温酸素化保存観察においてトラブルなく終了した。1回目の酸素運搬体としてブタ血液を10%配合した実験では灌流前肝重量765gが灌流後肝重量971gと26.9%の重量増であり、2回目の酸素運搬体としてブタ血液を30%配合した実験では灌流前肝重量781gが灌流後肝重量993gと27.1%の重量増であった。常温酸素化灌流においては、血栓の出現による灌流不全のリスクがあるが、今回の実験においては常温酸素化灌流中、ヘパリンを混注した灌流液を用いることにより血栓の出現は防ぐことができ、灌流圧の上昇は認めなかった。また常温酸素化灌流装置には人工心肺用の人工肺を酸素化装置として用いているが、酸素流量をコントロールすることにより、灌流中の灌流液酸素分圧は300-700mmHg程度と良好な酸素化が得られた。一方で灌流液中のカリウム濃度が徐々に上昇していく現象がみられ、肝細胞の破壊を反映している可能性があると考えられる。ブタ血液の配合濃度を変えて実験を続けていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では1年次にブタ血液配合濃度を変えた実験を終了し、2年次以降生存実験を行う予定であったが、まだブタ血液配合濃度を変えた実験が終了していない。しかし、ブタ血液配合濃度を変えた実験が終了しないと生存実験へは進めないので順に実験を施行していく。また、脳死肝移植、死体肝移植についての海外でのハンズオンセミナー(ELITA split liver course, ベルギー)に参加し、脳死肝移植、死体肝移植におけるグラフト肝の扱い方や処理方法を確認し、常温酸素化灌流装置の改造に役立てた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画からは遅れているが、予定に沿って実験を進めていき、常温酸素化灌流における適切な酸素運搬体濃度を求めたのちに肝移植生存実験を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年次においては、予定されていた常温酸素化灌流保存実験をすべて終了することができなかったため、次年度への繰り越しが生じた。2年次においても実験を継続していくため、実験を行うための三元ブタおよび灌流液、灌流液調整薬品、一部ディスポーサブルの灌流装置部品を購入していく。また実験における外注検査および実験データ解析のためパソコンを購入する予定である。本実験は将来的に脳死肝移植、死体肝移植への応用を検討しており、本邦では少ない脳死肝移植、死体肝移植の技術研修の機会があれば参加して実際の脳死肝移植、死体肝移植の手順にそって常温酸素化灌流装置を利用できるように装置の改良を進めていく。
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