本研究では、非浸潤性乳癌が浸潤するしくみを明らかにすることを目的とする。乳癌の非浸潤性乳癌は手術で完治できる早期癌であるが、進行とともにやがて浸潤癌へ進行し他臓器へ転移する。この浸潤を食い止める治療法は未だ確立していない。申請者らは、これまでに予備実験により非浸潤癌の進展に上皮間葉移行が関与する可能性を見出した。そこで本研究では上皮間葉移行が浸潤形成に寄与することを明らかにする。さらに上皮間葉移行を抑制する薬剤を用いた浸潤癌への進行の抑制効果を検証し、非浸潤性乳癌の全く新しい治療薬への可能性を探る。本研究の成果により、大目的である「手術をしない」という選択を患者に提示できることを目指す。本年度は、非浸潤癌細胞株にTGFβを添加しEMTを誘導することで浸潤能が高まることを、sphere assayにおける形状の変化やEMTマーカーの免疫染色により明らかにした。さらに手術標本を用いてEMTマーカーの免疫染色を行い、EMTマーカーの発現が高い腫瘍ほど、微小浸潤の存在や術後局所再発率が高いか否かを調べた(データ集積中)。 さらに非浸潤性乳癌におけるHER2蛋白や低酸素マーカ―の発現の関連を調べ、非浸潤性乳癌の多くが遺伝子増幅なしにHER2蛋白を過剰に発現していることを見出した。
|