研究実績の概要 |
本研究は、先天性横隔膜ヘルニア関連遺伝子の1つとされるPre-B-cell leukemia transcription factor 1という蛋白をコードするPbx1やその関連遺伝子の発現、およびタンパク産生を、qRT-PCR法や、組織免疫染色法で分析し、横隔膜欠損における鍵分子を同定し、発生機序を解明し、本疾患に対する新たな予防法の開発への応用を目指すものである。 そのために、まずは先天性横隔膜ヘルニアの動物モデルの作製に着手した。Sprague-Dawley rats(Harlan Laboratories, Shardlow, UK)の受胎後、在胎9日に、1mlのオリーブ油に溶解した100mgのナイトロフェン(2,4-dichloro-phenyl-p-nitrophenyl ether)(WAKO Chemicals GmbH, Neuss, Germany)を投与した。胎児期の横隔膜の形成に重要な3つのポイント、すなわち在胎13日、15日、18日のそれぞれにおいて、ラットを帝王切開し胎仔を取り出した。それぞれの時期で取り出された胎仔の横隔膜を拡大顕微鏡で肉眼評価し、またHE染色を行い、横隔膜の組織学的形態評価を行った。ナイトロフェンを母獣に投与された群の原始横隔膜組織は、形成異常を有することが確認された。 その後、横隔膜組織の検体抽出に取りかかった。在胎18日の胎仔横隔膜検体は、蛋白分解した後にRNAを抽出し、cDNAを作成した。在胎13日、15日の胎仔検体に対しては、パラフィンブロックを作成した後、10μm切片からレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(Arcturus XT)で横隔膜成分だけ採取した。その後プロトコールに従い、RNAを抽出し、cDNAを作成した。 これにより、今回の実験に必要な検体を揃えることが出来た。
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