研究課題/領域番号 |
18K16288
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
高橋 俊明 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (70624857)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 先天性横隔膜ヘルニア / 肺低形成 / Pbx1 / Meis1 / Runx1 / ナイトロフェン / 横隔膜 |
研究実績の概要 |
本研究は、横隔膜欠損の分子メカニズムを解明するため、先天性横隔膜ヘルニア関連遺伝子の1つとされるPre-B-cell leukemia transcription factor 1という蛋白をコードするPbx1に着目した。先天性横隔膜ヘルニアの動物モデルを作製し、Pbx1や関連する遺伝子の発現、およびタンパク産生をqRT-PCR法や、組織免疫染色法で分析する。横隔膜欠損における鍵分子を同定し、発生機序を解明することにより、疾患に対する新たな予防法の開発への応用を目指すものである。 2018年度には、先天性横隔膜ヘルニアの動物モデルの作成に成功し、横隔膜検体のcDNAの作成が完了した。 2019年度には、Pbx1、またはそれと一連のシグナル経路で働くと言われている、Myeloid ecotropic integration site 1 (Meis1)やRunt-related transcription factor 1(Runx1)などの肺や横隔膜組織での蛋白および遺伝子発現を評価した。その結果、疾患モデル群の横隔膜や肺組織において、Pbx1とMeis1、Runx1のmRNAおよび蛋白の発現が有意に減少していることが証明された。 2020年度は、2019年度の結果を集積し、再評価した。他の文献も参考にし、Pbx1はMeis2、Runx1という蛋白と結合して、ともに一連のシグナル経路の中で働く可能性があると推察された。そしてそのシグナルの障害が、胎生早期での横隔膜の発達において重要なPPFの発生を阻害し、結果として横隔膜欠損が生じているという理論を提唱した。 COVID-19の流行の行動制限により、国際学会での発表や、海外における有識者との意見交換などは叶わなかったが、ここまでの結果を論文の形にまとめ上げることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の流行により、移動制限が生じた為、多くの国際学会での発表やディスカッションというステップは叶わなかった。 また、ヒトでみられる先天性横隔膜ヘルニアの胎児期における予防治療を模索するための追加実験も種々の制限により叶わなかった。 反面、現段階までの研究結果を論文の形にまとめ上げ、査読のあるジャーナルで掲載されるに至ったことは、一つの成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
Pbx1は、Meis2、Runx1という蛋白と結合して、ともに一連のシグナル経路の中で働く可能性があるのか再考察する。さらにそのシグナルの障害が、胎生早期での横隔膜の発達において重要なPPFの発生を阻害し、結果として横隔膜欠損が生じているという理論が正しいのか再考察する。 機会があれば、この結果を多くの国際的な学会で発表し、その分野の専門家にも意見を聞く。 また、横隔膜の発生異常を引き起こす標的蛋白(候補はPbx1)を、ナイトロフェン投与した母獣に腹腔内投与し、胎仔への影響を確認する。Pbx1導入+ナイトロフェン誘導ラットモデルの横隔膜を前述の方法で、採取・解析する。他の動物モデル(ノックアウト等)での報告と比較、およびヒトでの遺伝子研究分野での報告とともに比較・統合することにより、ヒトでみられる先天性横隔膜ヘルニアの胎児期における予防治療を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
多数の国際学会が中止となったため。 今後の追加実験のための該当薬品や物品の購入、または国際学会参加のための費用に使用予定である。
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