研究課題/領域番号 |
18K16290
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
松本 暁子 帝京大学, 医学部, 助教 (70573418)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳癌 / microRNA / エクソソーム / 術前薬物療法 / 化学療法 / 内分泌療法 |
研究実績の概要 |
エクソソーム由来のmicroRNA(miRNA)は、様々ながん種においてバイオマーカーとしての重要性が注目されている。乳癌においても、低侵襲なliquid biopsyによりmiRNA発現をモニタリングすることで、更なる個別化治療の実用化が期待される。我々は、原発性乳癌患者185例の血漿エクソソームmiRNA発現を解析し、浸潤性乳管癌症例におけるmiR-223-3pが、非浸潤性乳管癌症例や健常人と比較して、有意に高発現であることを明らかにした。さらに、miR-223-3p高発現群では低発現群と比べ、病理学的ステージが有意に進行しており、miR-223-3pを遺伝子導入したMCF7細胞株では、増殖能および浸潤能が有意に亢進していることを示した。 これらの知見をもとに、さらに本研究では、原発性乳癌患者における術前薬物療法の治療効果および予後予測因子としてのmiRNAの有用性を検討することを目的とした。1)術前化学療法および2)術前内分泌療法の対象となる症例に対して、それぞれ治療効果モニタリングに有用なエクソソーム由来miRNAのスクリーニングを行うことを予定している。 現在、luminal、triple negative、HER2陽性のサブタイプごとに、術前化学療法開始前の血漿サンプルを用いて、治療効果モニタリングmiRNA パネルの検証を行っている。 今後は、化学療法後の遺残腫瘍検体や、術前内分泌療法施行症例についても治療効果とmiRNA発現の関連性を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳癌の化学療法は、luminal、triple negative、HER2陽性のサブタイプにより治療レジメンや治療効果が異なるため、それぞれのサブタイプ別にmiRNA発現を解析する方針としたため、症例集積が不十分なサブタイプについては、さらに集積の期間を要したことが主な理由である。 まず、triple negative症例において術前化学療法の奏効例・非奏効例の治療開始前の血漿サンプルと、健常人の血漿サンプルからTotal RNA を抽出後、miRNA-PCR アレイを用いて解析し、それぞれの群間で認められるmiRNA発現の差異を検証した。さらに現在、validation setとして、triple negative だけでなく、luminal、HER2陽性症例の治療開始前の血漿サンプルについても、Taqman-PCR で治療効果モニタリングに有用なmiRNA発現を検証中である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、術前化学療法開始前と終了後の血漿サンプル間でmiRNA発現の比較を行い、発現量の変化と治療効果の関連性を解析する。また、蓄積した治療後の遺残腫瘍検体でも血漿サンプルとの相関を検証する予定である。 術前内分泌療法施行症例については、治療開始前の血漿サンプル約200例について、治療効果および予後とmiRNA発現との関連について検証を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の物品費が予想額を下回ったため。次年度に行うmiRNA解析の物品、試薬の費用として使用する予定である。
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