本研究は、下肢動脈バイパスへ応用可能な小口径で長い人工血管の開発を目的とし、生体内組織形成術(iBTA)という再生医療技術を用いて作製した人工血管バイオチューブをヤギおよびビーグル犬に移植して生体内での機能および開存性について評価した。 本年度は最終年度であるため、これまでに実施した動物実験から得た画像データおよび観察終了後に摘出したサンプルの組織学的評価を実施し、全てのデータを総括することを主目的とした。バイオチューブは組織工学的に作製した血管であり、現在臨床医療分野で広く用いられているpolytetrafluoroethylene製人工血管と異なり、全てが自己組織から形成されている。そのため、移植後は前後の生体血管に生着して自己血管の一部として存在し、バイオチューブ自体が足場となって自己の血管を形成する細胞が定着して徐々にバイオチューブ自体が血管様構造へとリモデリングされることが期待できる。これまでのiBTA研究では5cm未満の長さのバイオチューブを用いてラット、ウサギ、ビーグル犬への移植実験を実施してきたが、動物種やバイオチューブの内径に関わらず移植後数ヶ月以内に前述のようなリモデリングが実際に起こることがわかっている。 本研究では、ヒトの下肢へのバイパスを目的としているため、これまでにない長さで最長25cmの長さのバイオチューブを移植した。この長さのバイオチューブにおいても、移植後3ヶ月後の組織学的評価で完全にではないが、血管様構造へと全長においてリモデリングが起きていることを確認している。本研究では、移植数ヶ月の中期的観察期間においてであるがバイオチューブが開存可能なこと、また長いバイオチューブにおいても生体内でリモデリングされつつ血管の一部として機能することを認めた。
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