研究課題/領域番号 |
18K16294
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
市川 伸樹 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (50779890)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 切除 / 予後 / リンパ球単球比 / マクロファージ / リンパ球 |
研究実績の概要 |
これまでの先行研究で、切除不能転移性大腸癌において、原発巣切除は予後を延長させる可能性がある事、原発巣切除を行った症例の間でも、切除によりLMR(末梢血中リンパ球単球比)の術後増加する症例は減少する症例よりは生命予後が良い可能性がある事を示している。 本研究では、①切除不能転移性大腸癌の原発切除後のLMR増加例と減少例で摘出検体中の免疫状態の差異を評価し予後との相関を検討する事、②大腸癌肝転移における原発肝転移同時切除症例の切除検体を用いて原発巣と転移巣の免疫状態の差異を評価する事、③マウス大腸癌肝転移モデルを作成し大腸病変摘出有無での生存期間差異と大腸肝病巣それぞれの免疫状態を評価する事で最終的に大腸癌切除後の免疫状態を指標とする予後予測、治療選択の判断に資する画期的診断法を確立させる事を目的とする。 本年は、まず課題①に対する研究を行った。切除不能転移性大腸癌の摘出原発巣検体を用い、抗CD163、CD68、CD4、CD8、FOXP3抗体で免疫染色し、LMR増加例と減少例で原発巣の免疫状態の差異を比較した。結果、予後の良いLMR増加症例では、LMR減少症例に比較して免疫細胞の浸潤が少なく、特にCD163陽性マクロファージおよびCD8陽性リンパ球の浸潤が有意に少ない事を見いだした。すなわち、末梢血中のリンパ球単球比の変化が原発巣の免疫状態を反映し、これが予後と関係する可能性が示した。また、同結果について国内および国際学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
究明目標としている3課題(①切除不能転移性大腸癌の原発切除後の末梢血リンパ単球比(LMR)増加例と減少例で摘出検体中の免疫状態の差異を評価し予後との相関を検討する事、②大腸癌肝転移における原発肝転移同時切除症例の切除検体を用いて原発巣と転移巣の免疫状態の差異を評価する事、③マウス大腸癌肝転移モデルを作成し大腸病変摘出有無での生存期間差異と大腸肝病巣それぞれの免疫状態を評価する事)のうち、本年は課題①に取り組んでいる。現時点で、術前後でのLMR変化が原発巣の免疫細胞浸潤量を反映している事を示しており、おおむね順調と考えるが、浸潤免疫細胞の組成が仮説通りでなかったことや、新たにLMR変化と術前生検検体中の免疫細胞の浸潤量を評価する必要性など、研究前に予定していなかった問題にも直面している。しかしながら、課題①の成果は今後の日常診療に直接生かす事ができ、切除不能転移性大腸癌の治療方針を大きく変える可能性のあるもっとも重要性の高い部分なので、十分に時間をかける価値がある。
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今後の研究の推進方策 |
課題①(切除不能転移性大腸癌の原発切除後のLMR増加例と減少例で摘出検体中の免疫状態の差異を評価し予後との相関を検討する事)については、予後とリンクさせて原発巣の免疫細胞浸潤状態を評価した症例の術前生検検体を免疫染色で評価し、切除検体と生検検体の相関があるかどうかをプレリミナリーで検討する。続いて、症例数を増やし、生検検体における免疫細胞の量と術前後でのLMRの変化の相関を証明し、予後との関係を評価する。 平行して課題②(大腸癌肝転移における原発肝転移同時切除症例の切除検体を用いて原発巣と転移巣の免疫状態の差異を評価する事)の免疫染色による評価を行う予定である。 また、課題③(マウス大腸癌肝転移モデルを作成し大腸病変摘出有無での生存期間差異と大腸肝病巣それぞれの免疫状態を評価する事)についても、モデル作成を開始し、安定したモデルが確立できるように準備を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
究明目標としている3課題(①切除不能転移性大腸癌の原発切除後の末梢血リンパ単球比(LMR)増加例と減少例で摘出検体中の免疫状態の差異を評価し予後との相関を検討する事、②大腸癌肝転移における原発肝転移同時切除症例の切除検体を用いて原発巣と転移巣の免疫状態の差異を評価する事、③マウス大腸癌肝転移モデルを作成し大腸病変摘出有無での生存期間差異と大腸肝病巣それぞれの免疫状態を評価する事)を1年1課題ずつ究明する予定とし、それぞれに必要な金額を1年ごと計上していたが、前述のごとく、課題①は評価途中であり、これに利用予定であった金額が未使用として繰り越しとなっている。次年度に同課題を引き続き行う時に、順次使用予定となっている。
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