研究課題/領域番号 |
18K16295
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐藤 健太郎 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (90791715)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 下部直腸 / 肛門管 / リンパ流 / インドシアニングリーン / 免疫染色 / リンパ管トレーサー |
研究実績の概要 |
当該研究「下部直腸肛門管リンパ管マップの開発」に関し、2018年度は下部直腸肛門管のリンパ管に関し、インドシアニングリーン(ICG)蛍光法による術中リンパ管観察および顕微鏡での微細解剖観察を行った。 術中ICG蛍光法による術中リンパ管観察は、術直前に肛門管粘膜下層にICGを注入し、腹腔鏡手術の術中にICGの流れを観察することができる赤外観察機能付きの腹腔鏡で観察した。下部直腸と肛門挙筋の接着部が確認できる視野でICGの観察を行ったところ、下部直腸の筋層から肛門挙筋表面に広がるリンパ管を認めたため、下部直腸と肛門挙筋の間にリンパ管の交通が存在する可能性が考えられた。 顕微鏡での下部直腸肛門管領域リンパ管観察は、解剖献体および下部直腸癌の手術切除標本を研究に用い行った。リンパ管は免疫染色という方法で顕微鏡で観察した。免疫染色には、ポドプラニンという、リンパ管内皮に染色性を有する抗体を用いた。ICGで観察した部位を顕微鏡下に観察したところ、下部直腸の縦走筋という筋の筋層から連続して肛門挙筋の表面に広がる線維を認め、同線維内にポドプラニンに染色性を有するリンパ管を認めた。また、肛門挙筋や外肛門括約筋内には、縦走筋から線維が入り込んでおり、入り込んだ線維内にリンパ管が確認された。 ICG蛍光法と顕微鏡下観察から、下部直腸から肛門挙筋表面に連続するリンパ流の存在が確認された。この情報から、下部直腸癌に対する適切な術式について考察することが可能になると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、当該研究「下部直腸肛門管リンパ管マップの開発」に関し、以下の実験を行っている。実験内容および進捗状況は以下の通りである。 ①手術切除標本および死後早期解剖献体に対する免疫組織化学法およびリンパ管トレーサー注入による下部直腸肛門管機能的リンパ流の検討:現在、トレーサーとして墨汁(Indian Ink)を肛門管粘膜下層に注入し実験を行っている。 免疫組織化学法での同部のリンパ管配置の確認は順調にできているが、トレーサーに関しては、顕微鏡下で確認したところ、墨汁は主に血管への移行性が高いため、現在トレーサーを再検討中である。墨汁より粒子が小さい微粒子活性炭がリンパ管移行性が高いとする報告があり、今後微粒子活性炭をトレーサーとして再度実験を行う。 ②インドシアニングリーン肛門管注入による術中肛門管周囲リンパ流の検討:下部直腸癌手術症例において、倫理委員会での承認を得た上で患者の同意を得て、術直前に肛門管粘膜下層にインドシアニングリーンを注入し、術中に肛門管および肛門挙筋周囲のリンパ流を近赤外観察が可能な腹腔鏡で観察した。有害事象はなく、同部のリンパ流を確認することが可能であった。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き解剖献体を用いた下部直腸肛門管周囲の構造検討および手術切除標本・死後早期解剖献体に対する免疫組織化学法およびトレーサー注入による下部直腸肛門管リンパ管マッピングおよび機能的リンパ流に関する検討を行う。また2018年度にデータ収集を行ったインドシアニングリーン肛門管注入による術中肛門管周囲リンパ流評価のデータと合わせ、イラストレーティングソフトを用いて下部直腸肛門管周囲リンパ管配置に関し図示する。上記のデータを文献的考察を加え、学会発表および学術誌への投稿を行う。 現状の問題点として、リンパ管特異的な移行性を有するトレーサーが確定できていない点がある。過去文献より、微粒子活性炭が候補に挙がるため、今後微粒子活性炭をトレーサーとしたリンパ流の検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
インドシアニングリーン観察用の赤外観察システムに関し、弘前大学医学部附属病院手術室の腹腔鏡システムを使用し代用可能であったため、次年度への繰り越しが可能となった。抗体購入費等物品費として次年度以降に使用する予定である。
|