研究実績の概要 |
下部直腸癌は一般に局所再発率が高く、予後も不良である。その背景には、多様なリンパ管ネットワークの存在が推定されるが、内括約筋、外括約筋ならびに内外括約筋間の微小リンパ管構造について、未だ定まった見解はない。そのため本研究では、献体標本ならびに手術摘出標本を用いて、下部直腸周囲微小リンパ管の立体構造ならびに下部直腸から周辺臓器に至るリンパ流の解明を行い、以下の点が明らかとなった。 1)免疫染色を用いた顕微鏡的微細解剖観察を行い、下部直腸縦走筋から分岐し肛門挙筋表面を覆うように広がる筋膜構造(Hiatal ligament, Endopelvic fascia)の内部に毛細リンパ管、毛細血管が確認された。 2)死後早期(24時間以内)の解剖検体の肛門管粘膜下層に固定処理前に脈管トレーサー(墨汁)を注入した後切片作成し免疫染色を併用し観察したところ、1)で観察されたHiatal ligament, Endopelvic fascia内のリンパ管周囲の間質内に墨汁取り込みを認めた。同部の間質液はリンパ管内へ吸収されるといわれており、墨汁の局在から下部直腸肛門管の粘膜下から Hiatal ligament, Endopelvic fasciaへの組織液の交通およびリンパ管への流入が示唆された。 3) 下部直腸癌手術中にインドシアニングリーン(ICG)蛍光法を骨盤底観察時に行い、直腸壁からHiatal ligament, Endopelvic fasciaに連続するリンパ流を確認した。 上記研究結果を論文化し公表した。
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