研究課題
本研究は、食道扁平上皮癌に対する化学放射線療法(CRT)効果予測因子の解明と集学的治療戦略の確立を目的として、CRT抵抗性関連因子であるMurine Double Minute 2 (MDM2)などの各種マーカーのCRT抵抗性や予後への関わりをより明確にし、さらにMDM2を標的とするMDM2阻害薬の癌やCRT抵抗性に関してin vitro、in vivoより基礎データを得ることによって、特にMDM2をマーカーとして用いた食道癌の治療戦略の策定と、前方視的臨床研究への足掛かりをつくることを目的としている。今年度は研究計画書に従って、根治的CRT症例、術前CRT手術症例、術前化学療法手術症例、根治的CRT後救済手術症例に関して東北大学病院食道外科グループのデータベースおよびカルテからCRT・化学療法の感受性や予後、臨床病理学的因子などのデータを抽出した。放射線併用の化学療法に関しては5FU・CDDP(FP)の2剤の症例とDocetaxelも加えた3剤(DCF)の症例も含み抽出した。この併用化学療法に関しては特に頸部食道癌についてDCF3剤の方がFP2剤よりも完全奏効率が高く有意差はないものの生存率向上に寄与していることが示され、CRT感受性の検討については留意すべき臨床項目である考えられた。また、術前CRT手術症例に関しては治療前生検組織標本(54症例)・手術切除標本(66症例)を選択し、各症例について、術前治療前後の上部消化管透視検査・内視鏡検査、CT・PET-CT検査を用いた臨床的治療効果度を収集し、パラフィン包埋ブロックより薄切標本を作製、HE染色およびMDM2を始めとした細胞周期関連因子、細胞増殖因子などを免疫染色した。また症例の最新予後調査を行った(カルテ・郵送アンケート調査)。
2: おおむね順調に進展している
根治的CRT症例、術前CRT手術症例、術前化学療法手術症例、根治的CRT後救済手術症例に関してデータベース・カルテを用いたデータ抽出、術前CRT手術症例の治療前生検組織標本・手術切除標本についてのパラフィン包埋ブロックからの薄切標本作製、HE染色および免疫染色に関しては概ね計画通りに進んでいる。
今年度抽出したデータを整理し、CRTや化学療法について関連を見ていく。術前CRT手術症例の治療前生検組織標本・手術切除標本についてはHematoxylin - Eosin染色にて、生検組織標本については改めて腫瘍の分化度、形態の評価、手術摘出標本については、腫瘍の深達度、分化度、浸潤様式、リンパ管侵襲、静脈侵襲、術前治療効果度を評価する。また、MDM2を始めとしたマーカーの免疫染色の評価も行い、各々の関連や臨床病理学的因子との関連を調査する。免疫染色マーカーに関してはまだ限定的で、さらに種類を増やして染色を行っていく。新規の症例は随時追加を検討していく。
データ解析用準備物品や、組織標本の病理学的検索のための染色において、当施設の設備をできる限り用いたことと、免疫染色の抗体についてまだ限られたものしかできていないことで支出が想定より抑えられた。免疫染色に関してはさらに種々の抗体・薬品を購入し行うことと、データの解析結果の学会発表、論文作成を引き続き行っていく。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Esophagus
巻: 15 ページ: 281-285
10.1007/s10388-018-0627-7