研究課題/領域番号 |
18K16298
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
下村 治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60808070)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌マーカー / 早期診断 / レクチン / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
目的1:本研究は膵癌の新たな糖鎖マーカーを糖結合タンパクであるレクチンを用いて探索する研究である。臨床膵癌の腫瘍検体を用いた網羅的なレクチン染色を行い、我々がこれまで同定してきたレクチン(論文報告済)に加え、新たに候補となるレクチンを2~3同定した。血清中にこれらが遊離し検出が出来るかを検証中である。 目的2:膵癌細胞株を用いたIn vitroの検証では、癌細胞の培養上清中の糖鎖の検出には成功した。各細胞株別に細胞数毎に培養上上清を検出を試みて、少量の検体からも癌細胞由来の遊離した糖鎖の検出に成功した。これらの実験で、癌細胞由来の特異的糖鎖の検出が可能であることを確認した。 目的3:倫理委員会の承認を得て採取した複数の膵癌患者血清、非癌患者血清、また膵癌以外の消化器癌患者血清を用いて候補に挙がった1レクチン×抗体(癌由来抗原抗体)、2レクチン×レクチンの方法を複数のレクチン、抗体を用いて最適な組み合わせの同定を行った。これまでレクチン×抗体でも膵癌由来患者血清特異的に反応する組み合わせを検出することに成功したが、感度が十分でなく、臨床応用には依然として課題がある状況である。特定のレクチン×レクチンに組み合わせで検出する手法に関しては、感度、特異度共に比較的良好であり、効率的に膵癌の患者血清中の糖鎖を検出できることを発見した。また、これらの検出力は臨床で用いられている腫瘍マーカー(CA19-9やCEA)と比較し、検出感度が高いことも明らかとなっており、今後マウスモデルを用いて更に腫瘍体積と検出感度の関係やより効率的な検出法の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌の早期発見を目指し、血清中の癌細胞由来糖鎖の検出に向け、標的となる糖鎖の同定、検出に必要な候補となるレクチン、抗体の組合わせの同定はほぼ完了し、実際の患者血清中からも検出できることを確認した。ただし、今後の解析結果、更に優れたレクチン、抗体の組合わせを発見した際は、この限りではない。実験計画通りに進んでおり、今度早期診断に向け更に検出力を高める工夫が必要である。これらの実験は、マウスモデルを持ちいて、検出感度を高める技術の確立を同時に進めていく方向で調整している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のゴールは、無症状の切除できる状態の早期膵癌のマーカーを血清中から同定する技術、方法の確立である。そのために必要な標的レクチン、抗体の同定は終了し、その手技もほぼ確立できた。今後、企業と連携し特許申請を並行して進めつつ、具体的な検出感度をマウスモデルを用いて検証し、本検査の感度特異度を同定していく予定である。具体的には膵臓以外の腫瘍(胃、大腸癌)などを移植したマウスと、膵臓癌を移植したマウスで検出感度の測定を行っていく予定である。また、臨床応用に向け、実際の腫瘍自体から遊離される抗原タンパクは極めて微量と考えられるため、より感度の高い検出方法が必要となることが想定されてる。これらもマウスモデルを用いて、微量な血清検体からも検出できるように更なる工夫を行っていく。また、出口を見据えて、実際の臨床応用の際に必要な検査キットや、容易に検出可能な仕組みを作ることも進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究試薬、採取した血清をバンクに保管する保管料、また実験動物購入費として使用予定。具体的には、血清中から糖タンパクを検出するための、レクチンや抗体の費用、傾向検出するための試薬類、バンクセンター(つくばiLabo)での検体用血清の保管料、腫瘍モデルマウスの作成、維持に必要な経費として算定予定です。
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