研究実績の概要 |
本研究は糖鎖レクチン反応を応用した新規サンドイッチアッセイ系を開発し、膵臓癌を早期に発見する特異性の高い診断法の確立を目指す研究である。我々が新たに同定した新規レクチンを用いた免疫沈降法で得たバンドより質量分析を行い膵癌患者血清中に高発現する約40種類の糖タンパク質の中からGlycoproteinAを同定した。このGlycoproteinAはレクチンと抗体を同時に認識することで確認され、健常人の血清中には確認されず、複数の膵癌患者血清で陽性になることが確認された。更に健常者99名、慢性膵炎患者9名、膵癌患者88名、大腸癌患者25名の血清を回収し、GlycoproteinAの検出確認したところ、膵癌患者で陽性となることが確認され、中でも手術を施行された膵癌患者群では、術後にGlycoproteinAの発現は低下することも確認された。これは、従来より臨床で使用されているCA19-9と同等の結果であった。更に早期膵癌での検出を確認するために、膵癌患者88名をステージ別に検出感度を確認したところ、GlycoproteinAは切除可能な早期ステージ(1A~2A)で特に検出感度が高いことが分かった。膵癌患者全ステージを含めたROC解析では、膵癌の検出率はCA19-9とほぼ同等の検出感度(AUC0.822 vs 0.790)であったが、早期膵癌に限局したROC解析では、ステージ1A~2Aの検出感度はGlycoproteinAがCA19-9よりも優位に検出感度が高いことが示された(AUC0.899 vs 0.754, p=0.023)。本検出系は従来の糖鎖のみを検出するCA19-9と異なり、糖鎖+Coreタンパクの両方を同時に検出可能な手法であり、特異性の向上が期待されている。今後更なる大規模試験に向けた準備、企業と連携しキット化に向けた準備を行っている。
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