研究課題
当研究室では、肝幹/前駆細胞のマーカーであるkeratin 19 (K19)に着目し、肝細胞癌癌幹細胞に関する研究を行っている。これまでに、肝細胞癌において癌幹細胞の性質を占めるK19陽性細胞はTGFb/Smad pathwayの恒常的活性化を背景とした悪性形質を示し、癌の転移や再発に深く関与していることを示してきた。本研究は、K19陽性肝細胞癌が転移・再発に関与するメカニズムを明らかにし、新規治療標的を創出することを目的としている。2018年度は、臓器の細胞成分を薬剤によって除去し細胞外基質のみを得る脱細胞化技術を用いて獲得したラット正常肝/線維化肝由来脱細胞化肝臓を用いて肝細胞癌の3次元立体培養を行い、正常肝由来脱細胞化肝臓と比較し線維化肝由来脱細胞化肝臓ではK19陽性細胞が保持されやすく、腫瘍の浸潤・転移が高頻度に起こることが確認された。また、線維化肝由来脱細胞化肝臓で培養された肝細胞癌ではsnail, slug, vimentin, マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)9などの上皮間葉転換に関わる遺伝子が高発現していることも判明した。2019年度は、K19陽性肝細胞癌に対する手術症例の臨床背景因子と肝線維化の関係について解析を行い、その結果K19発現状況と肝線維化の進行度に相関がある可能性が示唆された。現在は、K19陽性肝細胞癌検体の遺伝子変異を網羅的に解析し、K19陽性肝細胞癌が示す悪性形質について検証を重ねている。
3: やや遅れている
遺伝子変異の網羅的に解析に当初の予定よりも時間を要している。
・K19陽性・陰性細胞をそれぞれ正常肝/線維化肝ラット由来脱細胞化肝臓内で培養した際のSmad2/3のリン酸化を比較検証し、背景肝からのシグナルとTGFb/Smad pathwayとの関連を調べる。続いてK19のsiRNAや強制発現ベクターを用いたgain/loss of function によりTGFb/Smad pathwayの活性化に変化が生じるかを比較検証する。・ヒト肝細胞癌臨床検体の遺伝子変異につき網羅的解析を継続し、K19陽性肝細胞癌における遺伝子発現とTGFb/Smad pathwayとの関連を検証する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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