• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

難治性大腸癌のPDXモデルを用いた薬剤耐性に関わる新規バイオマーカーの探索

研究課題

研究課題/領域番号 18K16313
研究機関岡山大学

研究代表者

矢野 修也  岡山大学, 大学病院, 助教 (50794624)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードEMT / イメージング / PDX / CMS4大腸癌 / 治療抵抗性
研究実績の概要

大腸癌では遺伝子発現パターンによるConsensus Molecular Subtypes (CMS1-4) 分類が提唱された。そのうちCMS4-EMT型大腸癌が一番予後不良であった。本研究では、癌細胞のみならず癌微小環境をも模倣する患者由来腫瘍組織片PDXマウスからCMS4-EMT型PDXモデルと、我々が独自開発したEMT可視化CMS4大腸癌細胞株モデルを用い、CMS4大腸癌の予後不良機序を網羅的な遺伝子発現解析で明らかにするとともに、CMS4大腸癌の薬剤耐性に関わる新規バイオマーカーの探索を行うことである。
岡山大学倫理委員会で承認を得て、患者由来組織サンプルを使用できるよう整備した。
まずは、CMS4-EMT型大腸癌組織由来のPDXモデルを作成した。高度進行大腸癌症例を選択し、手術で切除した原発巣もしくは、リンパ節や肝転移巣から腫瘍組織をNOD/SCIDマウスに移植し、腫瘍が大きくなったところでヌードマウスへ継代するPDX作成の定型化を行なった。14例の移植を行なった結果6例が生着した(成功率43%)。そのうち、病理学的所見から、CMS4-EMT型PDXモデルは2例であった。
同時に、EMT可視化CMS4大腸癌細胞株の作成を行なった。我々が独自に作成した、VimentinプロモーターでRFPを発現するEMT-MET可逆性EMT可視化プローブをCMS4大腸癌細胞株に導入した。EMT誘導物質でEMTが誘導される誘導型EMTと、恒常的に間葉系を維持している恒常型EMTの存在が明らかとなった。
以上より、CMS4-EMT PDXマウスモデル、CMS4可視化モデル細胞株を作成することが可能であった。特に我々独自のCMS4可視化モデル細胞はオリジナリティが高く、誘導型EMTと恒常型EMTの新たなEMTの提唱を基に今後、予後不良なメカニズムの解明を行うこととしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CMS分類に応じた大腸癌の細胞株とPDXモデル作成に従事した。岡山大学倫理委員会で承認を得て、学内で患者由来組織サンプルを使用できるよう整備した。
大腸癌組織由来のPDXモデル作成は、悪性度が高い腫瘍組織の方が生着率が高いとの予想のもと、Stage3以上の進行大腸癌を選択的に抽出した。高度進行大腸癌症例を選択し、手術で切除した原発巣もしくは、リンパ節や肝転移巣から腫瘍組織をNOD/SCIDマウスに移植し、腫瘍が大きくなったところでヌードマウスへ継代するPDX作成の定型化を行なった。14例の移植を行なった結果6例が生着し、腫瘍が増大した(生着率43%)。一旦増大した腫瘍をヌードマウスに継大可能になったのは、そのうち71%であった。病理学的所見、MSS/MSI status、RAS/RAF statusから、CMS1-免疫型PDX2例、CMS2もしくは3-PDXモデルは2例、CMS4-EMT型PDXモデルは2例であった。PDXモデル作成の定型化は実現可能となった。
同時にモデル細胞である、EMT可視化大腸癌細胞株の作成を行なった。我々が独自に作成した、VimentinプロモーターでRFPを発現するEMT-MET可逆性EMT可視化プローブを大腸癌細胞株に導入した。CMS1大腸癌細胞株、CMS3大腸癌細胞株には導入を行なっても赤色を発現することはなかった。CMS4大腸癌細胞株に導入したところ、EMT誘導物質でEMTが誘導されRFPを発現する細胞と、一方SW480は恒常的にRFPを発現する細胞が存在した。CMS4大腸癌細胞株で、誘導型EMTと恒常型EMTの異なるタイプがあることが示された。また、化学療法を行うと治療抵抗性細胞がEMTを引き起こすことも確認した。
以上より、当初の計画通り、CMS4-EMT PDXマウスモデル、CMS4可視化モデル細胞株を作成することが可能であった。

今後の研究の推進方策

初年度の計画通りに、蛍光イメージングによりリアルタイムモニタリング出来るCMS4モデル細胞とCMS4-PDXを確立出来たので、確定させた上で薬剤耐性、予後不良因子の抽出を行う予定とする。
1. モデル細胞株とイメージングを用いた、EMTをリアルタイムにモニタリングする事で化学療法抵抗性フェーズを確認しながら、抵抗性を獲得するメカニズムに迫る。
まずはin vitroでのモデル細胞を用い行う。CMS4-誘導EMT型大腸癌細胞株に化学療法を行うことで、EMTが誘導される事を確認している。CMS4-恒常EMT型大腸癌細胞株にも化学療法を行う事でどのような挙動を示すかを確認する。CMS1-3の大腸癌細胞株にも同様の治療法を行う。イメージング技術を用い、EMTの誘導、維持を確認しながら、CMS4大腸癌細胞株に各種抗癌剤を投与後、薬剤耐性を獲得した腫瘍細胞からRNAを抽出する。網羅的な遺伝子発現解析を行い、薬剤耐性に関連する遺伝子発現を同定する。また、同様の実験系をin vivoでも行い、さらなる検証を行う。
2. CMS-PDXモデルを用いての検証。
まず、作成したCMS別-PDXの確定を行う。MSI-Hリンチ症候群からの、CMS1-PDX、従来型のCMS2 or CMS3-PDX、間質増生を伴ったCMS4-PDXと思われるPDXが揃っているので、免疫染色、mRNAなどから、CMS別PDXを確定させる。これらPDXモデルに化学療法を行う事で、モデル細胞で得られた薬剤耐性に関連する遺伝子発現の再現性の確認を行う。

次年度使用額が生じた理由

PDXマウスの生着率が予想以上に良好であったため、マウスの購入金額が予想よりも少なかった。
また、CMS4-EMT可視化細胞の樹立も、トランスフェクションが良好であったため、トランスフェクションに必要な試薬が予想よりも少ない使用で研究が可能であった。
差引額の今後の使用に関しては、CMS別のPDXを確定する必要があるので、免疫染色、mRNAの試薬購入に充てたいと考える。

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi