研究実績の概要 |
KCTD proteinとSNX9の結合阻害剤探索のための大規模スクリーニングの系を構築し、パイロットスクリーニングを実施した結果、大規模スクリーニングに耐えうる high-through put性を担保している事が分かった。また、申請書が同定した新規血管新生因子SNX9を発現抑制したヒト血管内皮細胞HUVECを用いて、KCTD protein結合能欠失型SNX9を過剰発現させた所、血管新生が回復しない事を明らかにした。この結果は、SNX9とKCTD proteinとの結合が血管新生において機能的である事を示している。更にSNX9の臨床的重要性を評価するために、ヒト大腸癌組織におけるSNX9の発現を組織染色法により解析した。その結果、ステージや腫瘍部位に関わらず、 59例のヒト大腸癌組織の全てにおいて、腫瘍血管内皮細胞と腫瘍上皮細胞でSNX9が正常組織に比べ、高発現している事実を見出した。更に、トランスクリプトーム解析による予後解析を実施した結果、SNX9の発現が高い方が大腸癌の予後が悪い事実を明らかにすることに成功した。 SNX9は細胞膜と細胞内小胞エンドソームの間の細胞内膜輸送を制御する事が知られているが、その他のメカニズムについては不明な点が多く、血管新生に関与し、さらに大腸癌の新規予後規定因子として細胞内膜輸送制御分子SNX9の同定に成功したことは重要であると考える。また申請者は、上記について論文発表を行った(Tanigawa et al., J. Cell. Phy siol. 2019)。
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