研究課題/領域番号 |
18K16318
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久保 信英 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (20811748)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 食道癌 / 酸化的DNA損傷 / 8-oxoG / OGG1 / MutYH |
研究実績の概要 |
我々は喫煙が食道発癌に関して酸化的DNA損傷を誘発することを報告したが、1) 喫煙などから発生した活性酸素(Reactive oxygen species: ROS)は酸化ストレスとなりDNA損傷から発癌を誘発する。8-oxoG(8オキソグアニン)はヌクレオチドであるグアニンの酸化体である。酸化されたグアニンはDNA 複製の過程でアデニンと誤った塩基対を形成することで、そのアデニンは次の複製でチミンと対を形成する。このような遺伝子変異はトランスバージョン変異と呼ばれ発癌の原因となる。細胞内では酸化的DNA損傷を修復する機構があり、これが発癌を抑制する重要な役割を担っている。酸化的DNA損傷を受けたヌクレオチドを塩基除去修復する機構を備えており、OGG1,MutYH,MTH1の3つの修復に関わる酵素が重要な役割を果たすことで遺伝子変異を抑制していることが分かっている。今回、ヒト食道癌の臨床検体(食道癌組織と食道正常組織のパラフィン包埋ブロック)から薄切プレパラートを作成し8-oxoG、OGG1とMutYHについて、発現量やその強度を評価して臨床病理学的因子と比較検討することでOGG1とMutYHの臨床的な表現型を探索した。 結果①:MutYHの免疫染色ではMutYHは癌部で高発現していた。MutYHとTUNELの蛍光2重染色ではMutYH発現癌細胞でTUNEL陰性でありMutYHが癌のアポトーシスを抑制しているという仮説に矛盾しない結果であった。 結果②:食道癌粘膜正常部と癌部におけるMutYH発現の割合 MutYHは癌部で高発現している症例が有意に多数を占めていた。(P<0.01)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調なので省略
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今後の研究の推進方策 |
①ヒト食道癌の臨床検体(食道癌組織と食道正常組織のパラフィン包埋ブロック)から薄切プレパラートを作成しOGG1とMutYHについて蛍光免疫染色を施行し、共発現しているかなどの局在を評価して臨床病理学的因子と比較検討することで、共発現している部位と共発現していない部位で、酸化的DNA損傷因子である8-oxoGの蓄積量やアポトーシス因子の発現を調べ、癌組織の細胞死に関してOGG1とMutYHの役割を推察する。 ②ヒト臨床検体で得られた結果を食道癌細胞株で確認するためにOGG1やMutYHの発現を免疫組織化学染色法やWestern Blotting法、qRT-PCR法にて確認して裏付けを得る。 ③OGG1やMutYHを単独あるいは組み合わせでKnockdownやKnockoutした細胞株を作製して合成ビタミンKであり酸化ストレス剤であるメナジオンを投与する。それぞれの細胞株の生存率やアポトーシスの割合をMTT AssayやTUNNEL法で評価しMutYHが癌細胞のアポトーシスを抑制していることを検討する。
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