研究課題/領域番号 |
18K16326
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
井上 隆 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60623478)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内視鏡的粘膜下層剥離術 / 局所再発 / implantation / 遊離腫瘍細胞 / viability / povidone iodine |
研究実績の概要 |
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD, Endoscopic Submucosal Dissection)は、早期癌に対して粘膜下層に局注液を注入して剥離し病変を切除する内視鏡治療であるが、我々はESD後の局所再発症例を経験した。ESDは病変を一括切除できるため、分割切除による遺残局所再発ではなく、implantationによる局所再発が示唆された。我々はESD直後の腸管内洗浄液に遊離腫瘍細胞が高率に存在し、腸管内洗浄による遊離腫瘍細胞の除去効果を報告してきた。大腸ESD後の遊離腫瘍細胞の生着能を明らかにすることを目的に本研究を計画した。 大腸ESD15症例をESD後に内視鏡下に腸管内洗浄を行い、回収した洗浄液中の遊離腫瘍細胞のviabilityを評価した。回収直後、3時間後、6時間後、12時間後に施行した。それぞれのviabilityの中央値が24(9-33)%、24(8-50)%、16(8-48)%、21(6-46)%で、時間の経過によって細胞活性が有意に低下することはなかった(P=0.87)。さらに回収直後の洗浄液に消毒液(povidone iodine)を付加した。povidone iodineの濃度は0%(付加なし)、0.5%、1%、2%とした。それぞれのviabilityの中央値が、24(9-33)%、20(10-33)%、17(1-30)%、11(0-16)%で、povidone iodine2%付加ではpovidone iodine付加なしに比べ細胞活性が有意に低下した(P<0.01)。 大腸ESD後の遊離腫瘍細胞のviabilityは12時時間では低下せず、洗浄による除去が必要と考えられた。2%の消毒液(povidone iodine)を付加した液で洗浄することで遊離腫瘍細胞のviabilityを低下させ、大腸ESD後の局所再発の予防につながると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は遊離腫瘍細胞が検出できる適切な症例をコンスタントに集積できなかったため、やや症例集積に難渋した。 また、遊離腫瘍細胞が検出された洗浄液からのDNA抽出を試みたが、細胞変性が強い症例が多く、シークエンスに適したDNA抽出に難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
遊離腫瘍細胞が検出された洗浄液からの安定したDNA抽出の方法を検討している。抽出したDNAを次世代シークエンサーで解析する。遊離腫瘍細胞の解析とともに、切除した病変本体の方も次世代シークエンサーでの解析し、遊離腫瘍細胞と病変本体のDNAの比較を考慮している。
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