がん微小環境における慢性炎症はIL-17/STAT3 pathwayを介して腫瘍浸潤免疫担当細胞の免疫チェックポイント発現を活性化し、腫瘍の増殖が促進されると考えられる。そこでがん微小環境におけるIL-17/STAT3 pathway制御し、免疫チェックポイントを阻害することで免疫逃避機構を強力に解除し、癌免疫療法の効果増強が得られるものと作業仮説を立て検証する。 最終年度の研究成果:<Ad-STAT3 siRNAを腫瘍局所STAT3発現抑制による免疫担当細胞における免疫チェックポイント分子の発現の検討>前年度のモデルと同様に、①Ad-STAT3 siRNA、②Ad-SNC、③PBSを腫瘍内に投与し、Day14に腫瘍組織、脾臓を採取し、免疫担当細胞を分離し、免疫チェックポイント分子の発現をFACSで評価した。結果としてAd-STAT3 siRNA投与群ではIL-17siRNA投与群と同様に腫瘍浸潤Th1細胞の増加とimmune checkpointの発現が減少する傾向を認めたが、Il-17siRNA群とは逆にTreg細胞は増加を認めた。<Ad-IL-17 siRNA、Ad-STAT3 siRNAを用いたがん微小環境におけるIL-17/STAT3発現抑制との併用による腫瘍増殖抑制効果の検討>同様の皮下腫瘍モデルにおいて、Ad-IL-17 siRNA、Ad-STAT3 siRNAの同時と投与により、それぞれ単独投与群と比較してより強い腫瘍増殖抑制効果を認めた。免疫チェックポイント阻害剤との併用療法については時間的問題から検討できていない。 研究全体での研究成果:がん微小環境におけるIL-17/STAT3 pathway制御は抗腫瘍免疫を活性化し、免疫チェックポイント発現を低下させることで、より強力な腫瘍増殖抑制効果を認めた。
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