研究課題/領域番号 |
18K16330
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
大久保 博世 北里大学, 医学部, 助教 (50406930)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 類洞内皮 / トロンボキサン / 肝類洞閉塞 |
研究実績の概要 |
肝類洞閉塞症候群 (Sinusoidal Obstruction Syndrome: SOS) はオキサリプラチンに代表される抗がん剤治療や造血幹細胞移植後に惹起される肝障害である。重症の場合は多臓器不全を合併し致死的となる。その原因は不明で、有効な治療法も確立されていない。肝類洞閉塞症候群症例では血小板や血液凝固異常の可能性が指摘されている。そこで本研究ではモノクロタリン投与によるマウス肝類洞閉塞症候群(Sinusoidal Obstruction Syndrome: SOS)モデルを用いてトロンボキサンA2の受容体(TP)シグナルの役割について検討をおこなった。C57BL6マウス(野生型マウス)またはTPノックアウトマウスにモノクロタリンを投与した。投与48時間後に野生型マウスに比較してTPノックアウトマウスでは肝障害が(ALT増加、出血肝壊死)が増悪した。肝内や末梢血液中の血小板数には差はなかったことからTPシグナル欠損は血小板を介してSOSを増悪させたとは考えられなかった。TPは血小板以外にも類洞内皮に発現することを見いだした。そこで、類洞内皮の発現を比較するとTPノックアウトマウスで減少した。また肝類洞内皮障害について、内皮障害マーカーなどを遺伝子発現はTPノックアウトマウスで増加した。さらに培養肝類洞内皮細胞をモノクロタリンで刺激したときの生存率はTPノックアウトマウスで減少し、トロンボキサンA2アナログ投与で回復した。この結果からSOSではトロンボキサンA2受容体シグナルが肝類洞内皮を保護することで肝障害が軽減したものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が、当初に立案した実験計画に沿って、ほぼ順調に遂行されている。すなわち、モノクロタリン(Monocrotaline, MCT)投与により肝類洞閉塞症候群(Sinusoidal Obstruction Syndrome: SOS)に類似した肝障害を再現することができた。さらにSOSにおける肝類洞内皮TPシグナルの関与を確認することができた。しかしながら当初予想した血小板TPシグナルの関与はSOS では否定的であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって確立したSOSモデルを用いて当初の実験計画に沿って、本研究を進めていきたい。とくにTPシグナルの肝類洞内皮保護作用のメカニズムを明らかにする。また肝障害におけるマクロファージの果たす役割は極めて重要であり、本実験モデルにおいても、その重要性を検証する予定である。またSOSにおける血小板凝集の意義については不明なままであるために、これについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった消耗品の納入が間に合わなかったために次年度に繰り越した。
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