研究実績の概要 |
抗癌剤治療は膵癌治療の中核を担うものであるが,治療前にその効果を予測する方法は確立していない.当科ではこれまで膵癌切除検体を用いて抗癌剤感受性試験であるCD-DST法を行ってきた.本試験は術後補助治療における効果予測に一定の効果が期待できるものである一方,間質成分が多い膵癌では組織を採取しても検査対象となる癌細胞が少なく,検査不能となることが多いという問題が明確となった. 以上より本研究の目的は①CD-DST法の結果をもとに定量プロテオミクスの手法にて感受性を予見する因子を抽出し,②免疫染色法による効果予測法の確立を目指すことにある. これまで対象症例としてCD-DST法において,5-FUに対して低感受性であると診断された症例を3例(症例A,B,C)、高感受であると診断された症例を3例(D,E,F)抽出し,各症例のホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)を用いてレーザーマイクロダイセクションによって癌部のみの採取を行った.採取された検体を用いて質量分析法で解析を行ったところ,6症例で計2484種類のタンパクが抽出された.このうち低感受性群にで共通して発現するタンパクは804種類,高感受性群に共通するタンパクは1148種類であった.2群間でタンパク発現の差異を比較したところ,低感受性群で有意に高発現しているタンパクを6種類,高感受性群で有意に高発現しているタンパクを21種類抽出することに成功した.現在プロテオミクスの対象症例を増やすことで,さらなる候補因子の絞り込みを行うとともに,文献的な検討を行っている.
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