研究課題/領域番号 |
18K16337
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有明 恭平 東北大学, 大学病院, 助教 (10754921)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌 / CD-DST / プロテオミクス / 5-FU |
研究実績の概要 |
本研究の目的は網羅的プロテオミクス解析法を用いた膵癌抗癌剤感受性予測法の開発である.これまで我々は膵癌切除標本から癌細胞を分離し,特定の抗癌剤に暴露するという薬剤感受性試験を行い,膵癌術後の補助治療の効果予測にCD-DST法が有用であることを示してきた.一方間質成分の多い膵癌では,検査を行ううえで十分量の細胞を採取できないとう問題もあり,その成功率が低いものであった.本研究は膵癌治療の中核を担う抗癌剤である5-FUについて,CD-DST法の結果を使用しその効果予測が可能となる新たなバイオマーカーを同定することにある.対象症例としてCD-DST法にて5-FU低感受性と診断された5例、高感受性と診断された5例を選択し,各症例のホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)から1症例3検体ずつレーザーマイクロダイセクション(LMD)を行い癌部の抽出を行った.計30検体を用いて質量分析法にて解析した結果,2696種類のタンパク質抽出に成功した.標識フリー法にてPerseus®を用いて解析したところ,LS群にこう発言している因子を5種類,HS群に優位に発現している因子39種類を抽出することに成功した.文献的考察を加え,特にアポトーシスや抗癌剤感受性,5-FUや葉酸代謝に関わる因子を選択し,候補因子として13種類に絞り込みを行った.この因子について,すでにCD-DST法で5-FUの感受性結果が示されている47症例の検体を用いて免疫組織染色を行い,低感受性群と高感受性群で発現強度を比較したところ,高感受性群の3因子(因子A、因子B、因子C)において,免疫染色法による有意な差を示すことができた(因子A:p=0.002, 因子B: p=0.012, 因子C: p=0.029)に発現していることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目までに5FUの感受性に深く関与していることが示唆される,感受性予測候補因子の抽出に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
今回同定された3因子を用いて,実際の切除検体を用いた免疫染色法を行う.その発現量によって膵癌術後の補助治療として使用されるS-1投与後の効果予測に対する有用性についての検証を行う.対象症例は2006年~2018年の期間に当科で膵癌の診断にて切除が行われ,ガイドラインの規定に沿って半年以上S-1による加療が行われた57例に設定した.効果予測のアウトカムとして先行論文にのっとり,再発をアウトカムとした検証を行う. また本研究で検出された3因子はいずれも膵癌における機能が明らかになっていないものである.このため,感受性に関する機能解析としてsiRNAを用いて各候補因子の発現を抑制させたのち,5-FU暴露後の感受性試験及びアポトーシス機能の評価を行い,抗癌剤感受性に影響を及ぼすメカニズムについても併せて検証する予定である.
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