研究課題
小膵癌の切除組織からDNAを抽出し、ゲノム・エピゲノム解析を加えることで小膵癌の診断に有用なバイオマーカーを同定し、さらには臨床診断にまで応用を図ることが本研究の根幹である。しかしながら、前年度に報告したとおり、ホルマリン固定パラフィン包埋組織から抽出されたDNAは、その収量および品質からシーケンス解析を行うことが困難であった。偶発的に発見される小膵癌の数自体が少ないことから、さらなる試みとして、膵癌ハイリスク症例に対象を限定した上で、発癌のリスクとなるバイオマーカーを同定する方針とした。膵癌の危険因子のひとつに膵嚢胞があり、嚢胞性膵腫瘍のなかでも代表的な膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に注目し、上皮内癌(high-grade dysplasia)および浸潤径5mm以下の微小浸潤癌の診断マーカーについて検討を加えた。血液を用いたバイオマーカーでは好中球-リンパ球比、血清抗p53抗体、などの有用性が示唆され、さらにIPMN症例のセルフリーDNAを用いて膵癌関連遺伝子変異の検出を試みたところ、IPMNの組織異型度の推定には有用であったが、悪性度予測は困難であることが明らかになった。さらに本研究の結果を踏まえたfuture planとして、良悪性のIPMNの鑑別をより高精度に行うため、広義のリキッドバイオプシーとして膵嚢胞液中からバイオマーカーを探索する研究を立案し、現在サンプルを収集を継続して行っている。さらには、IPMNに由来しない膵癌に対しては、最も現実的な早期診断のストラテジーを再考し、まずは家族歴、膵嚢胞、慢性膵炎などの膵癌の高リスク例に注目する、それらの症例に対して内視鏡的精査を行い、その際に採取された膵液を用いて膵癌特異的なバイオマーカーを検索するプロジェクトを立案し、こちらもサンプルの採取を開始している。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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