研究課題/領域番号 |
18K16340
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
明石 義正 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50709722)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胃癌 / スキルス胃癌 / 糖鎖発現 / レクチン / レクチンアレイ |
研究実績の概要 |
(内容)現行の薬物治療で治癒を目指すことが困難なスキルス胃癌に対して、分子標的抗体薬が標的とする癌細胞の膜タンパクよりも最外層に豊富に表出している無数の糖鎖を標的とした新規治療の開発を目的に研究を行なっている。我々はまず胃癌の細胞株を用いて胃癌細胞に特異的に発現する糖鎖の解析を、スキルス癌への進展が見られる印環細胞癌由来の細胞株と非印環細胞癌由来の通常型腺癌の細胞株で比較した。細胞株から抽出したタンパクを用いてレクチンマイクロアレイで網羅的糖鎖探索を行なった。その結果、印環細胞癌と通常型胃癌では19種類の糖鎖発現が異なることが明らかとなった。同様に臨床手術検体を用いて、スキルス癌と通常型腺癌の腫瘍組織および正常組織のそれぞれに対して同様のレクチンマイクロアレイを実施した。腫瘍組織と正常組織の比較においては27 種類の糖鎖発現の違いが明らかとなった。一方で、スキルス癌と通常型腺癌の比較においては、明確な糖鎖発現の相違を検出することができなかった。そのため相違を検出できなかった要因の検討を行なっている。 (意義)胃癌細胞を対象としたレクチンマイクロアレイによる糖鎖発現解析は数編の既報があるが、それらはいずれも対象を胃癌全体としており、病理組織型の違い、遺伝子型の違いなどで分類したものはなく、スキルス癌と通常型胃癌で糖鎖発現が異なるかどうかは未だ明らかとなっていない。現段階では細胞株と臨床検体で異なる結果となっているが、相違の有無にかかわらず新規の知見としての報告意義がある。また、既報のほとんどは糖鎖発現の違いを予後予測やバイオマーカーとした検討であり、糖鎖を治療標的としての探索は我々の他になく実現すれば新規性が高い革新的な治療となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験1. 胃癌細胞に特異的な糖鎖の探索:5種類の胃癌細胞株を用い、スキルス胃癌への進展を示す印環細胞癌由来の細胞株2種類(KATO-Ⅲ, NUGC-4)と通常型腺癌の細胞株3種類(NCI-N87, SNU-1, MKN-45)から蛋白を抽出し、レクチンマイクロアレイを実施した。これらに対してクラスタリング解析を行い印環細胞癌と非印環細胞癌を比較した結果、19種類のレクチンで結合親和性が異なることが判明した。 実験2. スキルス胃癌臨床検体を用いた糖鎖の探索:次いで手術摘出標本からスキルス癌4種類、非スキルス癌5種類を抽出し同様にレクチンマイクロアレイを実施した。しかしながら初回の検討ではスキルス癌と非スキルス癌で細胞株のような明確な糖鎖発現の違いは検出できなかった。要因としては症例選択段階でスキルス癌と非スキルス癌の相違が明確でなかったこと、臨床検体におけるスキルス癌は豊富な間質増生という特徴もあり、腫瘍細胞の数が相対的に少なく線維芽細胞など非腫瘍細胞が多量に混在するためと考えている。 上記のレクチン探索において当初の計画より若干遅れを生じているが、実験1で得られた19種類のレクチンで組織アレイを用いた標的レクチンの絞り込みを現在実施しており、これが達成されればほぼ計画通りの進捗状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは現在実施している組織アレイを用いた標的レクチン・糖鎖発現の絞り込みを達成させる。申請当初の段階では、臨床スキルス胃がんを再現する組織移植モデル(PDX: patient derived xenograft)を同時に作成することを計画していたが、近年マウス移植を行わずにin vitroで手術摘出検体を三次元培養できる3Dオルガノイドの技術が発展しており、我々の所属する大学研究室に於いても臨床膵癌検体からのオルガノイド作成に成功している。この技術を応用してスキルス胃癌および通常型胃癌のオルガノイドを作成し、レクチンの結合性評価を行い、腫瘍標的レクチンが絞り込まれた後には、担癌マウスモデルに対するin vivoでの抗腫瘍効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では当該年度にスキルス胃癌の標的となるレクチンの絞り込み作業を完了して当該レクチンを用いたマウス実験を計画して予算を計上していたが、レクチン絞り込みの段階で若干の計画の遅れがあり、マウスを用いたin vivo実験を開始できなかったために当該実験に使用を予定していたマウス購入費用、薬物や免疫染色に使用する抗体等の購入費用が計画より低く、また計画の遅れに伴い国際学会等への出張費計上も予算より低くなった。当該実験に関しては今年度に実施を行う予定であり、その分を次年度に繰越とさせていただいた。
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