研究課題/領域番号 |
18K16341
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高橋 一広 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80794528)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 羊膜上皮細胞 / 内胚葉系細胞 / 肝芽細胞 / 肝細胞 / 分化誘導 / IPS細胞 |
研究実績の概要 |
機能上皮芽細胞の一つである羊膜上皮細胞(human amniotic epithelial cells, hAEC)は、三胚葉のどの細胞への分化も可能であり、また腫瘍化する可能性も低いと考えられている。本研究は、廃棄処分される胎盤からhAECを分離し、免疫不全ラットに細胞移植を行い、ラット体内でhAECをヒト肝細胞に分化させることを目的とする。 まずは実験計画書に沿って、AECから直接肝細胞への分化、AECから内胚葉系細胞への分化をin vitoroの実験で行うことにした。まずは大学病院産科より譲渡されたヒト羊膜からAECの分離方法について、当科で既にあるマニュアルに従って、確実に行えるまで繰り返し練習した。また、分離したヒトAECの培養技術の習得をするのに最初の6か月を費やした。技術の安定を得てから、ヒトAECを肝細胞および内胚葉への分化を行うことにした。 ヒトAECをIPS細胞から内胚葉系細胞への分化誘導プロトコール(day 1, RIMP 1640、B27、Activin A、Wnt3a、Rock Inhibitor; day2-4 RIMP 1640、B27、Activin A、Wnt3a、sodium butyrate; RIMP 1640、B27、Activin A、Wnt3a)に従って、繰り返し培養するも、SOC17, FOXA2などの内胚葉系マーカーの発言は低く、内胚葉への分化は認められなかった。 以上より、AECから内胚葉系細胞への分化が、IPSプロトコールを使っているのが問題なのか、テクニカルに何か問題があるのかどうかを検証する必要に迫られた。ポジティブ・コントロールとしてIPS細胞を用いて、上記システムを用いると、IPS細胞から内胚葉性細胞への分化は形態的にはできていそうであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト羊膜からヒトAECを分離する技術は2017年3月で人事異動により、指導者が替わった。従って、研究室全体の分離効率も低下したために、担当者がAECを分離する技術を習得するのに時間がかかった。 また、IPSを用いた分化誘導に関するテクニックは今回初めて行うもので、テクニカルエラーについての検証を行うのに時間がかかった。形態的には内胚葉性細胞分化まではできているようであるが、上清におけるRNAの発現を調べている最中である。また、IPSから肝細胞および肝芽細胞分化への誘導ができていないことがテクニカルエラーなのか現時点ではあきらかなく、今後の検証を要する。
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今後の研究の推進方策 |
早急にポジティブコントロールのIPS細胞をまずテクニカルエラーなく、内胚葉系細胞、肝芽細胞そして肝細胞に分化させる必要がある。その後、ヒトAECを用いて、内胚葉系細胞、肝芽細胞、そして肝細胞への分化誘導をチャレンジする。少なくとも内胚葉系細胞分化まではテクニカルには問題ないようであれば、その細胞をXSCIDラットに移植して、ラット体内でヒト肝細胞への分化ができるかどうかの検証を行う。次年度はその予備実験として、IVISを使って、ラットに肝切除を行った後に、ヒトAECが残肝に集積するかどうかをreal timeで観察する方法を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
思った通りの研究成果が得られず、研究の進行にやや遅れが生じていることが主な原因と考えられる。次年度には、XSCIDが当研究室では使えなくなったことにより、免疫不全ラットを購入が必要となるため、繰越資金を有効に使用する必要がある。
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