研究課題/領域番号 |
18K16342
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
五十嵐 隆通 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20648472)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Galectin-3阻害薬 / 肝細胞癌 / 膵癌 |
研究実績の概要 |
既報告のGalectin-3阻害薬は細胞外でworkするもののみであり、今回我々は癌で薬剤活性が得られるよう細胞内外でworkする阻害薬を新規開発した。X線構造解析を基に、Galectin-3に対し従来の阻害薬の約5000倍の親和性を持つ競合阻害剤を開発した。合成にあたり本化合物の中間体を作成し、効率的に有機合成可能な工夫を行っている。7種類の類似化合物を合成し、それぞれについて抗腫瘍効果を検証した。複数の肝胆膵癌細胞株を用いた検討で、有望なGalectin-3阻害薬として7種類中3種類を同定した。研究協力機関である北海道大学と協議し、うち最も有望な1剤を大量精製し、以後の検討に用いる方針とした。 In vitroにおいて、ヒト膵癌細胞株のうちBXPC3を、肝細胞癌細胞株のうちHepG2を用いて同薬剤の効果を検討した。新規Galectin-3阻害薬は、BxPC3の増殖能・浸潤能を、HepG2の増殖能を容量依存性に有意に抑制した。また他の細胞株の検討でも、Huh7・Panc1・Suit2の増殖能を、Huh7・Panc1・Suit2・BxPC3・ASPC1の浸潤能を容量依存性にいずれも有意に抑制した。正常肝細胞に対する影響の検討で、新規Galectin-3阻害薬はヒト正常肝細胞(PXB-Cell)への毒性を認めなかった。 In vivoにおいて、新規Galectin-3阻害薬の200ng/day腹腔内連日投与により膵癌マウス皮下腫瘍の増大は抑制されたが、マウスの体重に影響を及ぼさず、良好な忍容性を確認した。 また、ヒト膵癌細胞株Suit2を用いたCAGE解析により、Galectin-3阻害剤は核内で作用しDNA複製や細胞周期に関与する要素が抑制されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Galectin-3阻害薬による癌治療の報告はこれまで認める(Oncogene. 2017 Mar 2;36(9):1297-1308. )ものの、今回我々の研究で用いるGalectin-3阻害薬は、化学的合成により極めてGalectin-3への親和性を高めた(従来の約5000倍)新規薬剤である。同薬剤を用いたIn vivo実験では、マウスの体重減少は認められず、優れた忍容性が期待出来る。既に新規Galectin-3阻害薬の大量精製体制は確立されている。外科教室の強みである臨床検体を最大限活用し得られた知見を用いて、新規Galectin-3阻害薬の臨床応用へと繋げていくことは、高い実現可能性を持つと同時に大変意義深く、且つ本研究の使命である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでIn vitroおよびIn vivoで得られた結果をもとに、さらにGalectin-3阻害薬の効果を検証する。具体的には、①In vivoにおけるGalectin-3阻害剤の至適濃度の検討、②PDX(患者由来膵癌組織)での効果を検討、③GEM+Galectin-3阻害剤での検討(他の抗癌剤の上乗せ効果の検討)の3つを検討している。 また、今後臨床応用などを検討するには、薬効濃度が高い可能性もあるため、平行して研究協力機関である北海道大学と連携し、現在の薬剤をベースに新規薬剤の再合成についても検討する。Galectin-3結合部分は変えずに修飾部を変更し、さらに100倍薬効を上昇させることを目指す。 膵癌、肝細胞癌に対してこれまで得られた結果をもとに、他の肝胆膵癌(胆道癌等)についてもGalectin-3阻害薬の有効性について検討していく。
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