非ウイルス性肝細胞癌は、しばしば短期間で巨大肝腫瘤を形成し根治切除が行われても、術後早期に残肝転移、縦隔転移、肺転移を来すことがあるが、このような転移進展形式は通常のウイルス性肝細胞癌では極めて稀である。今回、肝細胞癌の進展形式に術中虚血再灌流傷害が関連するかどうかをしらべるため患者予後と術中に記録された肝臓切離時間とプリングル法による阻血時間との関連をみた.【方法】2007年1月から2018年12月に初回肝切除が行われた肝細胞癌(HCC)214例中、後方的に手術記録から肝切離時間の解析が可能であった53例とプリングル法による肝臓阻血時間の解析が可能であった40例を対象とし、それぞれの時間と無再発生存期間について関係性を検討した。【結果】53例の肝切離時間の中央値は100分、39例のプリングル阻血時間の中央値は40分だった。肝切離時間100分未満(n=27)の生存中央値は28ヶ月、無再発5年生存率44%、肝切離時間100分以上(n=26)の生存中央値は23ヶ月、無再発5年生存率43%と両群に有意差を認めなかった(p=0.963 )。またプリングル阻血時間40分未満(n=17)の生存中央値は12ヶ月、無再発5年生存率25%、プリングル阻血時間40分以上(n=23)の生存中央値は28ヶ月、無再発5年生存率48%とプリングル阻血時間が長い群で予後が良好な傾向にあったが両群に有意差を認めなかった(p=0.178 )。
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