研究課題/領域番号 |
18K16352
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
児玉 泰一 滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (20581929)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 癌幹細胞 / 転移能 / 腹膜転移 / 術後再発 / 多能性マーカー |
研究実績の概要 |
本研究では「手術誘導がん転移」の概念のもと、術中に腹腔内散布された癌細胞、特にCD44陽性の癌幹細胞様細胞に焦点を当て、術中腹腔内散布癌細胞が腹膜転移を形成するメカニズムの一端を解明することを目的として、1)散布癌細胞の分化度と手術炎症下での脱分化・EMT 2)CD44陽性癌幹細胞様細胞の造腫瘍能 3)CD44のisoform:CD44s、CD44v6、CD44v9の癌細胞における機能 を明らかにしていく。 まず、胃癌細胞株(MKN45胃癌細胞)を用いて、CD44陽性細胞とCD44陰性細胞を、FACSを用いて細胞分離を行った。純度98%以上で陽性細胞と陰性細胞が分離可能となった。それぞれを培養し、培養時間や、培養液pHによるCD44陽性細胞から陰性細胞へ、または陰性細胞から陽性細胞への可塑性を観察した。CD44陰性細胞から陽性細胞への変化は認められたが、CD44陽性細胞から陰性細胞への可塑性は認められなかった。 次に、CD44陽性細胞の幹細胞性を、多能性マーカーとしてSox2の発現、および、Spheroid形成で観察した。血清培地、無血清培地による違いも観察した。CD44陽性細胞にSox2発現が認められ、 無血清培地によるSpheroid形成が認められた。 さらに、CD44陽性細胞の幹細胞性をNOD/SCIDマウスへの腹腔内移植による造腫瘍能により観察した。CD44陽性細胞は陰性細胞に比べ、少数のがん細胞腹腔内投与により、腹膜腫瘤形成が起こることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な実験手技をマスターするのに時間を要している。 患者検体を使用する前に、がん細胞株を使用した実験により、研究手技の精度を高めるとともに、バックグランドとなるデータを収集している。
|
今後の研究の推進方策 |
術中腹腔内散布癌細胞中に含まれるCD44陽性細胞の転移能を様々な視点で解析を進める。 1.術中腹腔内散布癌細胞と癌幹細胞様細胞の関係 (ア)術中腹腔内散布癌細胞における、CD44陽性癌幹細胞様細胞の存在およびそのisoform(CD44s、CD44v6、CD44v9)を調べ、腹膜再発との関連を検討。(イ) CD44(+)とCD44(-)細胞の幹細胞性や造腫瘍能の比較 ①EMT誘導 幹細胞の前駆細胞化 ②多能性マーカー((Nanog, Oct3/4, Sox2の発現) ③Spheroid形成(3次元培養で比較) ④NOD/SCIDマウスへの腹腔内移植による造腫瘍能の比較を行う。 2.手術炎症下での、術中腹腔内散布癌細胞と脱分化・EMTの関係 (ア)癌細胞にTGFβを添加 ①ヒト胃癌細胞株で検討 ②腹腔内散布癌細胞で検討 (イ)癌細胞に手術後腹腔内ドレーン排液(多種のサイトカイン含有を確認済み)添加 ①ヒト胃癌細胞株で検討 ②腹腔内散布癌細胞で検討 (ウ)脱分化・EMTはCD44isoform発現、Spheroid形成、EMTマーカー、多能性マーカー、造腫瘍能 等で評価。 3.CD44 isoformの機能と癌幹細胞性 (ア)胃癌細胞株(CD44無発現)の遺伝子改変により、プラスミドを用いたCD44 isoform(CD44s、CD44v6、CD44v9)をそれぞれ強制発現させ、強発現細胞株、低発現細胞株、無発現細胞株(野生型)を作製する。 (イ)それぞれの細胞を、機能解析し比較する。①Spheroid形成能 ②EMT誘導、幹細胞の前駆細胞化 ③多能性マーカー ④造腫瘍能 (ウ)ShRNAにより、CD44 isoformそれぞれを特異的に発現抑制し、機能の変化を観察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
CD44陽性がん細胞の幹細胞性をOct3/4で観察する実験を次年度に行うことにしたため。抗ヒトOct3/4抗体購入費として次年度使用を計画している。
|