膵癌の治療耐性を獲得する症例を事前に同定できるバイオマーカーの検討を行うことを目的とした. 実験予定.①膵癌術後再発後,治療抵抗性を示した症例と,比較的有効であった症例を比較し,治療抵抗性に関わる臨床病理学的因子および遺伝子の同定を行う.②治療抵抗性を示した症例郡に対して術前治療を行った際に,選定した遺伝子が誘導されていたのかについて検証を行う.以上から得られた結果で,同定した遺伝子について,③基礎実験(細胞実験および動物実験)による検証を行う. 再発治療抵抗性に関して後方視的検討を行い,再発部位が肝転移であった症例は治療抵抗性を示し,一方で肺転移再発の症例は治療の反応性が比較的良いことを証明し報告した(Surg Today 2018).そこで,肝転移部および肺転移部癌細胞から影響をうけたmiRを比較し,治療抵抗性のちがう膵癌のバイオマーカーを同定できると考え,肝転移再発症例および肺転移再発症例の手術後血清サンプルを用いてmicroRNA(miR)の網羅的遺伝子発現検査を行い,候補遺伝子としてmiR26aを同定した.miR26aはITGA5という肝転移に有利な蛋白発現を標的しており,術前治療の際にmiR26a低下することで肝転移をきたすと仮定した.末梢血中でmiR26aは肺転移症例では高く,肝転移症例では術前治療後低く,切除標本では癌部でのITGA発現がmiR26aの発現と逆相関していることを証明し報告した(第78回日本癌学会総会). miR26aは腫瘍特性把握に重要であったが,バイオマーカーとしては目的と合致しなかったため,パイロットスタディとして門脈血サンプルを加えた検討を行ったところ膵癌患者における門脈血のmiR発現は末梢血の発現と大きく違うことが証明された.今後さらなる症例で門脈血を採取し,予後情報確認後バイオマーカーを検討し,基礎実験へ進む予定である.
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