大腸癌の臨床検体における免疫組織染色の結果、syntenin-1の高発現が予後との強い相関を認めたことから、大腸癌におけるsyntenin-1の発現の意義を解明すべく、syntenin-1の抑制株を2種類のshRNAを導入することで、3種類の大腸癌細胞株(SW480・SW620・Caco2)において樹立した。これらの細胞株において、増殖能には変化を認めなかったが、遊走能・sphere形成能ではsyntenin-1抑制により低下することが分かった。また、抗癌剤感受性試験では、5-FUに対する感受性は変化を認めなかったが、大腸癌に対するキードラッグであるオキサリプラチンに対する感受性は、syntenin-1を抑制することにより上昇した。これらは、臨床検体の予後相関の結果とも矛盾せず、当初の仮説通り、大腸癌においてsyntenin-1が悪性化に何らかの重要な役割を担っていることを裏付ける結果であった。また、これらの結果は、syntenin-1が大腸癌幹細胞に関与することを示唆する結果であり、オートファジーとの関連に着目した現在の目的とも矛盾しない結果であった。一方、本研究はオートファジーとsyntenin-1の関連に着目した研究であるが、並行して他の関連タンパクを同定することも検討しており、現在網羅的全RNAシークエンスを次世代シークエンサーを使用してSW480の正常細胞株とsyntenin-1抑制株において行っている。
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