研究課題
がん細胞内では様々な代謝リプログラミングが生じ、がん細胞に有利な環境が作られている。Nuclear factor erythroid 2 related factor 2 (Nrf2)は従来、酸化ストレスや異物に対する生体防御機構を制御する転写因子とされていたが、近年がん代謝のmaster regulatorであると報告された。本研究の目的は肝胆膵領域癌において、がん代謝バイオマーカーとしてのNrf2の機能解析と新規治療法の開発であった。膵癌は様々な集学的治療を行うも予後は不良であり、さらに膵癌の大多数で見られるKras変異が、がん代謝に大きく関わっていることが知られている。これまでに我々は、In vitroの実験においてNrf2の発現が膵癌の腫瘍進展に大きく関わっていることを示し、パブリックデータベースにてNrf2高発現が予後不良であることを示した。また、がん代謝は腫瘍免疫と複雑に関連していることも知られており(Cell, 2015)、Nrf2もその制御に関わっていると報告された(Oncogene, 2018)。我々は臨床検体を用いて、膵癌においてCD8低発現・PD-L1高発現が予後不良であることを報告し(Cancer Sci, 2018)、パブリックデータベースにてNrf2とPD-L1発現が相関することを示している。今後、これらの知見に基づいてNrf2が腫瘍免疫を介して膵癌進展に与える影響について詳細に検討を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
臨床サンプルの発現解析、in vitro実験、in silico解析などを主に熊本大学で行っている。熊本大学では、膵癌における様々なMolecular data(KRAS変異、PIK3CA変異、BRAF変異、LINE-1 methylation level)のデータベース構築を行い、今後の更なる研究への地盤形成を行っており、それらとNrf2の相関関係の評価も可能である。さらに、これまでに膵癌が腫瘍免疫の観点から予後に与える影響を評価し、その結果を報告した。
近年、Nrf2はがん代謝のregulatorだけでなく、腫瘍免疫やオートファジーとの相互作用も報告され、さらに注目を集めている(Cell 2015, Front oncol 2018)。Nrf2をがん代謝だけでなく、様々な観点から多面的に検討することでNrf2の本来の機能を理解し、治療開発に繋げることが必要と考える。また、膵癌だけでなく、胆管癌も同じく予後不良の疾患であり、有効な治療法も限られている。我々は胆管癌においても、腫瘍免疫が予後に与える影響を報告しており(Br J cancer 2018)、がん代謝との相互作用の解析も可能である。また近年、メタボローム解析や次世代シーケンサー解析も可能になったこともあり、これらを用いて肝胆膵領域癌の新規オンコメタボライトの同定を含めた統合的解析も重要であり、今後進めていく予定である。
試薬、消耗品の購入費及び研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたいと考える。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (20件) (うち国際共著 1件、 査読あり 19件、 オープンアクセス 7件)
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